日本にいた時は、欧米IT企業が途上国をどのようにとらえてビジネスを展開しているのかあまり見えなかったのだが、途上国(私の場合はバングラデシュ)に駐在していると見えてくる彼らの戦略だったり便利なサービスだったりがあったりする。そのいくつかを紹介したい。
1. zero・Facebook(http://0.facebook.com/)
世界中でユーザを拡大しているFacebook。世界共通基盤でサービスを提供していると思いきや、途上国向けに少々変わったサービスを提供しているのをご存知だろうか?それはゼロ・フェイスブックと呼ばれるサービスである。
特徴は大きく2点。1つは軽いページ。3Gが導入されていないような地域のユーザ向けに、容量を軽くした特定のサイトを用意しているものである。
ここまでならふむふむといった程度であるが、面白いのは2点目。
なんと途上国の特定通信会社と提携し、パケット料が無料でFacebookに接続できるということである。つまり、Facebookユーザを獲得するために、ユーザのパケット通信料もFacebookが負担するというサービスを行っている。実際、私の使っている通信会社、グラミンフォンでは、上記サイトにアクセスすると画像が省略された簡易なFacebookページを閲覧することができる。
ITはロングテールモデルが合うとよく言われるが、将来的な顧客であるBOP層をつかむため、このような投資を実は最大手のFacebookが行っているのである。
2. Opera Mini(http://www.opera.com/mobile)
日本のスマートフォンユーザの皆様、どのブラウザを使っているだろうか?おそらく標準のブラウザ(iphoneならsafari)で特に疑問を抱いていないのではないだろうか。確かに日本にいれば、慣れさえすれば、特に不満を感じることはない。ところがバングラデシュのように3Gサービスが提供されていない地域になると様子は一変し、いちいちページを表示する時間がかかってイライラする。そこに一石を投じたのがOpera Miniである。
先進国のノルウェーの企業がよく開発したなと思うのだが、画面を表示する際に、ブラウザ側で一つ処理を挟むことで、ダウンロードに必要なパケット数を最小限に抑えるというのがこのブラウザの特徴である。しかもオプションとして画像を全くダウンロードしないという機能もあり、この機能をONにすると、ダウンロードするパケットは実に90%程度が削減できる。実際に何割このブラウザを通すことで削減できたかを表示する機能もあり、見ていて楽しい。実際、私も携帯からのWebブラウジングはこのブラウザを愛用している。
このように、日本にいると見えないニーズが途上国にあり、それに対するサービスを提供しているしたたかな先進国企業が存在する。毎回書いている結論ではあるが、日本の企業ももっと現地に出て、そういったニーズを的確に捉えたサービス展開をして行って欲しいと感じる。
コメント
zero facebookは初見でした。情報のご提供、ありがとうございます。facebookはデータセンターの仕様をオープンソース化するなど、技術だけではなく、公共・企業の調達・購買へアクセスする動きを見せていますね。きちんと儲けを提示して仲間を募るやり方は、ある意味王道かもしれません。
その一方で、端末製造メーカーであるHTCは、Facebook Home絡みでババを引いたっぽいですね。タイミングの違いだけで巨額の損失が出る可能性もあるってことで。
知ってるようで知らないことで、勉強になりました!
一部の地域ではFacebookが無料という話は聞いたことがあったのですが、てっきり携帯事業者が顧客獲得のために、費用負担しているのかと思ってました。Facebook側が費用負担しているというのは驚きました。常に危機感持って顧客獲得を怠らないところがすごい。
>Ozakiさん、tomonaritさん
そうですよね。日本にいるとなかなか入らない情報ですよね。飽くなき顧客獲得、デファクトスタンダードでなければ敗者に等しいですからね。
HTCのFacebook携帯は失敗ですか。かわいそうに(笑)
[…] そいうえば、以前、このブログでも“BOP市場に向けたFacebook、Operaの戦略”というタイトルで、ネット速度の遅い途上国でFacebookを使う方法の紹介がありました(Opera miniについては友人に紹介してとても喜ばれました)。こういう情報って、日本にいると知る機会がないですね。 […]
[…] BOP市場に向けたFacebook,Operaの戦略日本にいた時は、欧米IT企業が途上国をどのようにとらえてビジネスを展開しているのかあまり見えなかったのだが、途上国(私の場合はバングラデシュ […]