携帯電話とアフリカ社会

これまでもちょくちょく投稿しているけれど、アフリカにおける携帯電話については色々なニュースがある。そんな中から、関連する3つのニュースを紹介。

「Cellar New」というサイトに“Africa Crosses 500 Million Mobile Subscriptions Mark”というタイトルで、アフリカ大陸の携帯契約数が5億を突破したという調査結果が載っていた。5億というのは、世界の携帯契約数の約10%にあたる。
アフリカ大陸のなかでも、ナイジェリアが5億のうち16%を占めており、最も携帯契約数が多い。2番手はエジプト、3番手は南アフリカである。この記事によれば、今後は、エチオピア、コンゴ、エリトリア、マダガスカルといった東アフリカ、中央アフリカでの携帯普及率が2015年までに2倍になるという予想。

これだけ携帯が普及してくると、それを活用したサービスも盛んになるのは理解出来る。ケニアのM-PESAやM-KESHOに代表されるモバイルバンキングが良い例だろう。IT News Africaというサイトに“Western Union, MTN partnership to benefit rural Africa”というニュースが掲載されていた。ケニアでサファリコムと共にモバイルバンキングサービスを展開しているWestern Unionが、他のアフリカ諸国でもモバイルバンキングサービスを開始するという。まずはウガンダで開始し、さらにチュニジアやリビアなどでのサービス提供も視野に入っているという。また、これからスマートフォンが普及しだすことを見込んで、スマートフォン用のサービス展開も考えているとのこと。

これまで銀行がサービス提供の対象としていなかった田舎の人々(←支店がないのでコンタクトをとるのにコストがかかりすぎビジネスにならない)や低収入の人々(←取り扱い額が小額すぎてビジネスにならない)も、送金や貯蓄、融資といったサービスが利用できるようになるのは良いことだ。

ビル・ゲイツの財団のブログにも、“Banking on Savings for the Poor”というタイトルで、銀行サービスの利用により貧困層の生活が楽になるというメリットが説明されていた。なんでも、“Global Savings Forum”というイベントを今月開催するという。口座をもって貯金できることで、いざというとき(家族の病気など)に、家財道具や商売道具を売っぱらって金を作ったり、高利貸しから借金をしなくてすむとか、モバイルバンキングでの支払いや送金記録が信用度の審査に利用されることで、銀行から融資を受けれるようになるとか、これまでになかったメリットがある。ビル・ゲイツの財団のブログだけでなく、こういったメリットは色んなところで言われていることだ。

自分もモバイルバンキングは便利だし、銀行や携帯会社がサービスを拡張していくのは、良いことだと思う。が、敢えてちょっと違った面から考えてみたところ、「モバイルバンキングが貧困削減に役立つのか?」という点に関して、以下2つの疑問を感じた。

  1. そもそも収入が少ないのに、貯金出来るのか?(自分は貯金が出来ないタイプなので余計にそう思う)
  2. 貯金や融資のサービスは途上国の人々(農村部や低収入の人々)にとってそんなに斬新なのか?

1.の点については、単純な疑問である。モバイルバンキングのサービスを開始するということは、銀行や携帯会社は、採算をとるために、サービスを利用してもらえるような宣伝や「貯金は生活の保険だから大切」といった啓蒙活動を行うのかもしれないが、本当に多くの人々が貯金するのだろうか。お金を持っている人達が利用すればビジネスとして採算は取れる可能性はあるだろうが、貧困削減に役立つのか疑問。

2.の点については、貯金や融資のサービスはすでに途上国の農村部などでもすでにあるという想定から生じた疑問である。例えば、エチオピアでは「ウッドゥル」という日本でいう「結(ゆい)」のような組織がある。村のご近所さん仲間で構成されるグループで、各メンバーが定期的にお金を出し合い貯蓄し、メンバーの誰かがまとまった金が必要なとき(冠婚葬祭など)に貸し出すようなことをしている。他のアフリカ諸国でも同様の文化があるのは知らないながら、こういう文化がある国にとっては、貯蓄や融資というサービス自体は、「貧困削減に期待できる!」と興奮する程は思えない。むしろ、銀行や携帯会社の宣伝によって、「ウッドゥル」がモバイルバンキングに取って代わられ、古き良き文化(=農村部の社会的な繋がり)が希薄になってしまうかも、というのはちょっと憂い過ぎか。。。

ICT4D擁護派な自分は、モバイルバンキングのサービスが普及することは嬉しいけれど、上記のような疑問・懸念も。特に2.の点については、どうなるのだろうか。。。

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コメント

  1. […] This post was mentioned on Twitter by Clement Nyirenda, 佐々木 康裕 and Yuko Shinohara, tomonari takeuchi. tomonari takeuchi said: ICT4Dブログ更新しました。アフリカでの携帯普及とMobile Banking。貧困削減に寄与する期待はあるけれど。。。http://ow.ly/3cZc7 […]

  2. 梶谷健一 より:

    バクシーシも観点は違うけど、地元には地元なりに昔から続く仕組みが存在し、それが共同体の存在意義の一つとして機能しているんですね。
    「風をつかまえた少年」の様に、古い考えかもしれませんが新しい仕組みを匠に情熱で活用、切り抜けた事例が共有されて行く事が必要なのでしょうか。勉強になりました。有難う御座いました。

  3. tomonarit より:

    梶谷さん
    こういった問題は、ある意味、昔からある途上国開発のジレンマみたいなものなんだろうと書きつつ思いました。「開発」によって便利になることがイコール幸せになることなのか?みたいな。特に、ICTの影響は大きいので、常に良いことの裏にあるインパクトにも注意を払う必要があるのだと思います。いやはや難しいですね。

  4. […] ケニアのM-PESAによってモバイルバンキングが注目を浴びたのは、ご存知の方も多いと思います。実際、ケニアで2007年3月にサファリコムがM-PESAサービスを開始してから、グングンと普及していき、2010年には利用者は1千万人を突破し、人口の40%が利用していることに。さらに、2012年にはケニアのGDPの約15%にあたる金額が同サービス上でやりとりされているといった統計もある。そして、M-PESAで火がついたモバイルバンキングサービスは、他の国へも波及し現在は世界で140を超えるサービスが存在する。なかでも特にアフリカ諸国への波及効果は大きく、世界のモバイルバンキングサービスの約半数がアフリカ諸国を対象としたものである。 […]

  5. […] 個人的には、なんでもかんでも「すごく良い!」という話には、要注意と思ってしまう。何事にも正と負の面があるってのが世の常でしょうよ…と。そんな性分なので、過去にも「携帯電話とアフリカ社会」とか「モバイルバンキング神話は本当?」といった記事をこのブログでも書いてきた。それでも、ここ最近の携帯電話の普及率と活用を見ると、やはりこの流れは肯定するしかないと感じる。そんな風に思った理由として、IMFのRegional Economic Outlook: Sub-Saharan Africaというレポートを紹介したい。 […]

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