前回、ソーシャルアウトソーシングによる 貧困削減と雇用創出という記事を書いた。
最近、Richard HeeksのBlogに”BoPsourcing: Fighting or Fueling Inequality?”という投稿があり、なんとなく目を引いたので紹介します。
彼のいう”BoPsourcing”とは、ことばの通り、Base of Pyramid層への業務を委託すること、をそう呼んでいるわけで、大きく四つに分類している。1に近づくにつれて、より利益追求的に、4に近づくにつれより社会開発的になっていく。(※少し意訳しています。)
- Exploitative outsourcing ・・・労働者の賃金や労働環境を無視し、コスト削減を追及したいわゆる”搾取的”なもの。
- Commercial outsourcing・・・”不平等さ”を残しつつ、富のあるところからそうでないところへ業務を委託する”商業的”なもの
- Ethical outsourcing・・・利益を確保しつつも、既存の労働者の就業環境や環境問題等について一般的な基準はクリアしている、”倫理感”があるもの
- Social outsourcing・・・これまで、市場の労働人口としてカウントされていなかったBoP層の労働者に雇用を与え、彼らの賃金、資産、技術を向上に貢献する”社会貢献的”なもの
投稿のまとめとして、”In practice”には上記の要素が複雑にからみあっていて、ある側面からみればそれは”Social”であり、また違う側面からみれば”Exploitative”にもなり得る可能性があるということを述べている。
関連するステークホルダーごとに関心がちがうのだからその評価がことなることは仕方ないと思う。でも、雇用される側にも雇用する側にも共通の評価・判断基準ってないものなんだろうか。
そういえば、今年の11月にISO 26000が発効された。社会的責任 (SR: Social Responsibility) の呼称で策定されたISOで、7つの中核課題(組織統治、人権、労働慣行、環境、公正な事業慣行、消費者課題 、コミュニティ参画及び開発)ごとに,その範囲,その社会的責任との関係,関連する原則及び考慮点,行動及び期待などが定義されている。、、、のだけれども、審査登録制度がないガイドライン的位置づけのせいなのか、環境や情報セキュリティのときのようにいまいち盛り上がっていないように感じてしまう。それでも、CSRというバズワードにある程度のルールが示されるのはいいかもしれない。
援助の世界でもプロジェクトの評価手法って喧々諤々とした議論が行われているけど、昔留学していたときのルワンダ出身のクラスメイトが言った一言はとっても結構印象にのこった。ICT4Dプロジェクトの効果、についての議論の中、結局はどんな(に悪い)援助でも、”Better than nothing”だそうな。
どんなに搾取的な環境であったとしても、これまで賃金がゼロだったひとからすれば、ある意味では”Social outsourcing”、といえるのかもしれない。なにがSocialかSocialでないか、決められるのは誰(何)なんだろうと思う。
コメント
[…] This post was mentioned on Twitter by tomohiro, Tetsuo Kato. Tetsuo Kato said: ICTと雇用: ソーシャルアウトソーシングPart2 « ICT for Development.JP http://bit.ly/hUTFEp […]
[…] 社会企業化とか、SocialやBOPといった最近よく耳にする用語とともに、「ICTを活用して途上国開発に貢献できないか?」と考えてみると、途上国の女性や貧困層といった人達にICT関連業務を委託する事業(Social Outsourcing)が思いつく。誰でも思いつくだろうけど、実際やるのは簡単ではないだろう。そんなSocail Outsourcingを実施している団体がTech Crunchで紹介されていた。 […]