インターネット・携帯電話により実は格差は広がっている?

中国で開かれたアジア地域のICT政策関連の学者たちが集う学会に参加した。その会議自体は、各国のICT政策についての研究が多く、直接開発と結びつくものがメインではなかったが、彼らの話を聞いていて感じたことがあるので、書いてみる。あくまで私見に基づく推測です。

近年の途上国におけるインターネット、携帯電話の普及は目覚しく、デジタルデバイドや貧困は少しずつ解消されている、という話(仮説)があるが、本当にそうだろうか?

パキスタンの研究者が出した統計データに以下のようなものがあった。
インターネットの普及率は確かに上がってきている。しかし、インターネットが地方に少しずつ普及するのと同じペースで、都市部にはブロードバンドが入ってきている。
結局、これまではインターネットとナローバンドというデジタルデバイドがあったのが、今ではブロードバンドとナローバンドというデジタルデバイドに変わっただけで、都市部と地域部の収入格差も一向に減っていない。

ふむふむ、確かにそうかもしれない。インフラも進化はするがそれ以上に技術も進化しているので、結局差はなかなか埋まらないだろう。インターネットが普及したからといって喜んでいてはダメなのだ。

また、(なぜかアジア地域外の)南アフリカの研究所の人が出した統計データにこんな話もあった。
携帯電話は確かにアフリカで急速に普及している。そして、その普及度合いと貧困度合いは関係がない。つまり、その日暮らしの生活をしている貧困層でも、携帯電話にはお金を使っている。貧困層ほど所得に占める携帯電話代の割合が高い。

このアフリカの例、この話にはいろいろ考えさせられた。

確かに、携帯電話の普及により不当な手数料を取る仲介業者が減ったり、銀行口座がなくても送金可能なサービスが出たりしていて、便利にはなってきている。それは間違いない。
しかし、それ以前の段階として、所得に関係なく携帯電話を持っている、所得が低くても携帯電話にお金を投じてしまうという事実がある。これがなぜかと考えると、携帯電話の中毒性、これに尽きるのではないだろうか。
なんとなくかっこいい、他の人が持ってると欲しい、SMSが便利、、、などなど。これはおそらく途上国の人も同様なのであろう。確かにアフリカの田舎に出張で行っても携帯を持っている人は多いし、電気が来てない村でさえ、携帯があったりする。

つまり、携帯電話を持つほど所得が高くないにもかかわらず、携帯電話を持ってしまい、その中毒性から結局そこに必要以上のお金を投じてしまい、結局貧困から抜け出せない。
アフリカの携帯電話料金は安いらしいが、そんなの良心的なわけでもなんでもなく、料金を下げてロングテールにした方が儲かるからであろう。なんせ中毒性があるのだから、少しでも手の届くところにすれば、客はどんどん寄ってくる。

携帯電話ビジネスは、実はまさにこれが最も成功しているBOPビジネスで、手ごろな通話料でロングテールに展開することで、貧困層の人たちの少ない生活費から搾取するというビジネスなのかもしれない。。

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コメント

  1. tomonarit より:

    ICTの普及がより貧富の差を生む。
    ICT4Dのなかでも避けられない課題ですね。
    都市部と田舎のインターネット回線という部分でもそうだし、それ以外にも、もっとベーシックなもの(教育)がある。識字率とか情報を取捨選択する力とかに関する能力差も教育機会に恵まれている都市部とそうでない田舎では歴然。その能力がある者はインターネット利用でよりメリットを得て、そうでない者との格差が広がっていく。
    結局、都会に住んでる金持ち(have)と田舎の貧乏人(have not)の格差がより広がってしまう。

    また、BOPビジネスが必ずしも途上国の発展に役立つとも限らない。
    石鹸を小口にして安価で販売することが公衆衛生の改善につながるような好事例もあるけれど、タバコやお酒を考えてみると、当たり前のようにタバコ1本で販売してたり、お酒一杯で販売してる。
    で、子供の教育費に使うべきお金を、タバコやお酒につかっちゃうお父さんがいる。

    携帯電話がどっちのカテゴリになるのか?は、人それぞれで、
    どちらの要素も持ち合わせていると感じる。だからこそ、携帯普及がタバコやお酒の例とは違って、石鹸の例のようになるような、有意義な携帯サービスを作ることが必要なんだろうね。

    • Kanot Kanot より:

      そうですね。結局サービス側が、タバコや酒のような欲望を狙い撃ちしてビジネスをするのか、改善を目指してビジネスするのか。確かに携帯は両方の側面がありますね。
      おそらく前者の方が儲かるんで、なかなか理想通りには行かないんでしょうね。

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