ユニクロがミャンマーに生産拠点を設置するなど、このところミャンマー関連のニュースが目に付きます。このICT4Dブログのアクセス傾向を見てみても、昨年10月にKanotが投稿した「ミャンマーのIT・オフショア事情」へのアクセスがこのところ急増しています。ミャンマー・フィーバー凄いなぁ、と思っていたら、先日の日経コンピュータでは、「ミャンマーでオフショア開発」っていう特集が組まれていました。
この特集では、オフショア開発対象としてのミャンマーの魅力を、①低賃金(日本の20分の1から10分の1程度、中国の5分の1、ベトナムの3分の1のコスト)、②日本語習得の速さ、③国民性(穏やかで協調性あり)、と3つとりあえげていました。Kanotが投稿した「ミャンマーのIT・オフショア事情」でも同様の3点が、ミャンマーの可能性として指摘されており、なるほどと納得。
そして、特集ではミャンマーに拠点を設けてオフショア開発を進めている日本企業として、以下の企業の取組みが紹介されていました。
- 第一コンピュータリソース
- 大和総研
- サイバーミッションズ
- ラバーソウル
- NTTデータ
- アクロクエストテクノロジー
- アライズ
各社の取組み詳細については紹介しませんが(興味ある人は日経コンピュータをチェックしてください!)、いずれも上記3つのメリットを活かしてミャンマーでのオフショア開発の可能性に期待した動きです。この記事を読んでいて、日本企業の海外進出が進む点は喜ばしいと思いつつも、将来どうなるのか?と考えました。そこで思ったのが以下の2つ。
1.選ぶ側から選ばれる側へ
これまでオフショア先だった中国の人件費が高くなってきたので、オフショア拠点がベトナムに移り、次にベトナムも高くなってきたらミャンマーへ。将来、ミャンマーの人件費も高くなってきたら、今度はバングラデシュか?
このように安い人件費を求めて移動していくのもありですが、そのうち、逆に日本企業がオフショア先を選ぶのではなく、安い賃金の国がオフショア先としてどこの企業と組むかを選ぶようになっていくのではないだろうか。そのときに、欧米企業と比較して、日本企業の魅力って何かな?とふと思いました。給料の高さや世界での知名度などからいくと、そんなに大差ない(もしくは、負けてる)のかもしれないですが、終身雇用的な企業文化とかは、マッチする国にはマッチするんだろうなぁ。いずれにしても、選ばれる側としての魅力も磨かないといけない時代がくる日もそう遠くないかも。
2.海外を見据えた商品開発
日本企業の途上国進出はオフショアという形でも喜ばしいけど、そのオフショア先では、Ciscoのネットワーク機器を使ったインフラでマイクロソフトのプラットフォームにのっかるオラクルのデータベースを利用したシステムの開発だったり、iPhoneアプリの開発だったりするのかなぁ。(勿論そればっかりじゃないけれど)そう思うと、もう少し世界に食い込む製品を作っていかないと、本当の意味での海外進出にはならないのだと感じました。オフショア開発で途上国の市場を理解し、世界に通用する日本製品やサービスが開発されればと願うところです。そのためには、日本の技術を教えるという上から目線だけでなく、途上国のことを理解するという目線も重要。
上記2つのいずれにも言えることは、選ぶ立場から選ばれる立場へ、教える立場から教わる立場へ、といった両方の視点をもって途上国へ進出していくことが、今後とても重要なんじゃないかという点。これからどんな変化が起きるか楽しみです。
コメント
日経さんが仰るところの「最後のフロンティア」「低賃金、日本語習得の速さ、国民性(穏やかで協調性あり)」というキャッチコピーはベトナムにもフィリピンにもインドネシアにも謳われていたと思います(苦笑)。近年ではベトナムもストが連発するたびに基本給を上げざるを得ず、大変なようですが…。
ミャンマーはメコン域ではベトナムと並んで人口が多い国なので、一国だけではなく、「メコン域」というエリアやインドの内需への対応を考えると、生産や流通の拠点として狙い目なのかもしれません。2015-2018年あたりに予定されているASEAN経済統合を見据えての動きも含まれているのでしょう。
ITで当該国の内需にアクセスするとすれば、当面の最大顧客は公的部門でしょう。JICAは青年海外協力隊から財政投融資、技術協力でも教育機関支援から法整備支援まで幅広いGtoG支援スキームを持っているので、末端だけではなく「仕組み」のデファクトスタンダードをかっさらい、うまくビジネスとリンクしてほしいですね。
結局、日本語の習得が必要なので、それがコストに跳ね返る割には(当然外国人なので)日本人の満足する語学レベルには達せず、という状況ですよね。
日本がデファクトスタンダードをかっさらいたいところですが、メーカーごとにスタンダードが違うのが日本企業ですよね。(人はそれを切磋琢磨と呼ぶのですが。)官民一丸となることも大事ですが、民が一丸になれないのが日本なんですよね・・
もうそろそろSONY vs Panasonicとかじゃなくて、日本対韓国、日本対米国とかにマインドチェンジしないとならないです。なんか愚痴みたいなコメントになってしまいました。。
先のコメントの「仕組み」というのは、メーカーの差異の下に位置するレイヤーです。デジタルテレビの変調復号方式とか、個人認証基盤(住基カードや電子納税の認証基盤)とか。
例えば、ASEAN統合までに各国の通関が電子化(アセアンシングルウインドウ)されるようなので、確実に必要になってくる各国相互認証基盤(日本では電子納税で実装済み)の実装を、法整備を含めて日本方式で穫ってしまい、納税や高速道路料金などの電子決済システムや在庫管理など、その上に乗っているシステムは(日本方式を大幅に変更しなくてもよい状況で)各社で競争していただく、という感じです。ミャンマー、タイ、ラオス、ベトナムを押さえれば、物流面でもマラッカ海峡迂回ルートが確保できるかもしれませんね。
すいません、以下長文失礼致します。
>末端だけではなく「仕組み」のデファクトスタンダードをかっさらい、
>うまくビジネスとリンクしてほしいですね。
既に韓国政府(KOICA)がミャンマーの2010-2015年マスタープランを支援しながら作成中、Daewooが電子政府基本システムを受注して執行中、ミャンマー郵政公社も1200米ドルの借款を受けたと聞いてます。
既にOzakiさんがおっしゃっている「仕組みのデファクト」をカンボジアの時のように「かっされってしまわれた」気がしているのは私だけでしょうか笑。
…この辺、ミャンマーの対政府への支援状況はカンボジアへのIT支援と似てる気がしてます。更にインド政府、中国政府が共同で、サイバーシティを建設している意図が気になります…。
>もう少し世界に食い込む製品を作っていかないと、本当の意味での
>海外進出にはならないのだと感じました。
ここでtomonaritさんがおっしゃっている日本の技術海外進出についてですが、スマホやTVの液晶など韓国製品が世界市場で成功していて、日本の技術がガラケーなどに終わっているのは、日本の「売り方」にあると思います。
(…若干過激ですが、下記のfelicaの事例の記事にも載っているように)、私が国際標準に係った者として学んだことは、「優れた技術が必ずしも市場を制覇しない」ということでした。
「技術」+「売り方」が重要であり、日本では、「技術さえ優れていれば必ず売れる」という前提で考えられており、「売り方」の部分が現在でもおろそかにされていると思います。
記事にあるような特殊な国内市場の背景もありますが韓国は、戦略的な売り方で成功してます。
又、felicaだけでなく、、米国は国際標準を決める場において戦略的で「ルールを自分たちの都合に合わせて変える」mindでどんどん自国の製品をマーケットに売り込んでます。自国に有利になるようにルールを作るなど戦略的に活用してますし、最近は中国が論理的にはおかしくとも自国に有利になるように(都合の悪い時には堂々破って^^;)中華思想でがんがん攻めてきてます。.
…元々の性質か素直にできた「ルール」に従ってこの「売り方」の制度を全く生かしきれていないのが日本でした…何も米国中国のようになれとはいいませんが、このような戦略的な売り方なしでは市場制覇はできないと思いました。
↓
http://ggsoku.com/2011/11/ans-rev-1-smartphone-jp-felica/
このような「売り方」を成功させるために戦略的に攻め込むには、デファクトでもデジュールでも手段として日本企業が持っておくことが重要だと思うのですが、今年の経済産業省の「標準化戦略」からITが抜け落ちました。
将来的に少子化で国外に市場を見出すしかない状況を考えると、日系IT企業にとっては大きな痛手だと思います。
Miyazakiさんの仰る『日本では、「技術さえ優れていれば必ず売れる」という前提で考えられており』には強く同意です。日本製造業の得意とするKAIZEN(改善)も、このコンセプトの上に乗っているのでしょう。確かに、個々の部品や製品は激しく優れているのですが、その優秀さを理解するために、相手(顧客)に努力を強いるのはどうかなぁ、と感じます。「この部品を使うと、あんなことやこんなことができます」だけではなく「この(目に見える)ソリューションは、この部品を使っています」的なアピールができないものか、と悩んでいます。
「(ITなんて)知らない」と最初に言った方が何となくエライ立場、というのは日本国内事情ですが、それがいつまで通じるのでしょうね….。
アセアンシングルウインドウにまつわる通関システムの件では、カンボジアとラオスではUNCTADのASYCUDA WORLDをトライアル中、ミャンマーは韓国政府の売り込むUNI-PASSを採用、タイは既に独自システムを運用中、ベトナムには日本政府の無償資金協力でNACCSが導入される予定ですね。
それぞれシステムは入っていますがバラバラです。2015-2018年に予定されているASEAN経済統合以降では、これらをセキュアに相互接続することが必要なはずですが、米国か中国が怒濤の勢いで(法制度を含む)仕組みづくりをヤッてしまうんでしょうか….。ベトナムでNACCSのダントツの可用性を見せつけて日本方式へ他の国をなびかせるには、仕掛かりが遅すぎたのかなぁ。
….勝手な憶測ですが、仕組みを取るには、JICAさんや経○省など連携して(これまでにないほど)迅速に各国の動きも十分に見極めながらやっていかないと取れない気がします。
中国はこれまでの経緯を無視してデファクト取りにくる可能性十分にあると思っています。米国はそこまで東南アジアを市場として重視していないのではないでしょうか。
>アセアンシングルウインドウにまつわる通関システム
ところで、これ10年ぐらい前からH社とか幾度か提案書見た覚えがあります。
各社さんそれなりに関心持ってるはずなんですが、役人受け悪いのですかね?
確かに中国は、携帯電話の通信方式や通信暗号化なども独自っぽい仕組みを突っ込んできそうですね。特に暗号化通信の実装は、国家がいつでも任意にデコードできる、という当局側に極めて都合のよい仕組みなので、採用したい国家は多いかも(日本もそうかもしれないですね….)
アメリカはもっと簡単です。「この方式を採用しないと、米国に入れさせないぞ!」と言ってしまえばそれまで。海上コンテナのアクティブタグを利用したRFIDシーリングなんかが典型的ですよね。
通関システムについては、昔、ベトナムがNACCSのライセンス供与を日本に打診した際、そのときは日本側から断ったと記憶しています。その後、ここ数年で財務省(後に首相になる野田氏が財務相時代に)が、供与の方向に舵を切ったと思います。この手の国家的システムは規模が大きくなりがちなので、GtoGの枠組で債務保証をしないと、100%民業ではシンドイでしょう。
また、マラッカ海峡回避ルート構築については、最近のミャンマー態度軟化が大きいのでは、と勝手に想像しています。
[…] と、このような記事を読んでいて、ふとミャンマーと似てる点を感じた。ご存知の方も多いですが、ミャンマーは2011年3月にセインテイン大統領を首班とする新政権が発足してから民主化が進み、アメリカの経済制裁が解かれ、急速にインフラ整備を中心に発展をしている。ICTセクターを見ると、エチオピア同様に政府系通信事業者が独占状態であったが、民営化を進める方針であり、通信事業者ライセンスの国際入札を行い、この6月にノルウェーとカタールの通信事業者が落札している。今後、この外国2社がICTセクターに参入することで一層のICTインフラ&サービスの改善が期待できる。ミャンマーの目標は現在10%程度の携帯電話普及率を2016年までに80%近くまで持ってこうというかなり強気なもの。このブログでも紹介したように、日本のIT企業もポスト中国、ポストベトナムのオフショア開発拠点としてミャンマー進出を行っている。日経コンピュータでも特集が組まれて「最後のフロンティア」なんて呼ばれてました。 […]
[…] 以前、日経コンピュータで「アジア最後のフロンティア」としてミャンマーの特集が組まれていましたが、それは2012〜13年の話。それから5年立って、アフリカ特集が組まれるようになったとは、時代の流れを感じます。来年のTICAD7やイノベーション for SDGsを意識しての特集だったのかな。 […]
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