女性を取り残さないデジタル開発のための8つの効果的な手法

ジェンダー

こんにちは、Kanotです。今日は女性たちにとってインクルーシブなデジタル開発のために気にすべき点とはなんなのだろうか?について書いてみたいと思います。

まず、昨今「インクルーシブ」という言葉は目にする機会が増えてきましたが、意味はご存知でしょうか?日本に訳すと「包摂的な」などとなりますが、これもよくわからない言葉ですよね。ヒューマンライツのHPによると、「あらゆる人が孤立したり、排除されたりしないように擁護し、社会の構成員として包み、支え合う」という社会政策の理念を表すそうです。今回のトピックはジェンダー(女性)なので、この記事は、女性が孤立したり、排除されたりしないように擁護し、社会の構成員として包み、支え合うためのデジタル開発についての記事ということになりますね。

以下は、USAIDのWomenConnect Challenge DirectorであるRevi Sterling(その前はマイクロソフト・コロラド大学・NetHopeなどでICT4D関連の業務をしてきた方)が書いた記事を参考に、私が加筆・要約したものです。(いきなり余談ですが、こういったキャリアの方が政府機関のDirector(部長級)に登用されるのって素晴らしいことですね。)

はじめに

デジタルに限らず開発プロジェクトでまず大事なのは、エンドユーザをきちんと理解することです。今回のケースは女性がそれに当たりますが、識字率・コスト・安全性などといった制約をきちんと理解し、なおかつ女性のライフスタイルに合ったものでなくてはなければ、せっかく作ったサービスも浸透しません。

女性やその家族が何をどのように使い、どのようなことを望み、どういった情報を求めているのか。こういったことをきちんと知ることで初めて技術を使ったソリューションを生み出すことができます。

以下8点、デジタル活用したサービス開発の際に理解しておくべき点を挙げます。

1. インタラクティブな手法

文字が読めない人や文字にできない言葉(unicodeでサポートされてない言語)を使う人たちをサポートするには、音声入力や記号によるインターフェースが重要です。Human Computer Interactionと呼ばれる分野がこれに当たりますね。

また、文化による表現方法の違いも要注意です。例えば、「時間」は方向や場所のように文化によって表現が異なります。以下の図は、ガーナにおいて記号を元にしたTalking Bookというツールのものです。インターフェースは直感的に理解できる絵や記号になっています。

2. オフラインかオンラインか

昨今、3Gや4Gといった高速通信ができる携帯電話網は着実に広がっています。しかし、エンドユーザ単位で見ると、彼ら・彼女らがお金を払えなければインフラは何の意味も持ちません。そのため、オンライン・オフラインの適切なコンビネーションはデザインにおける重要なポイントの一つです。

先進国にいるとついオンラインを前提としてデザインしがちですが、全てリアルタイムである必要はありません。特にスパムデータや誤情報などが絡んでくると、そういった情報はむしろ女性の生活にネガティブなインパクトを与えてしまいます。

適切にコンテンツをフィルタリングし、必要最低限のデータ量・コストでエンドユーザに届ける仕組みが重要です。

3. オーナーシップとセキュリティ

テクノロジーをユーザに届けるためには、機器の盗難のリスクなども考えねばなりません。ユーザの声や指紋などによる認証も効果的です。そしてコストも女性にとっては使用するかどうかを決める大きな要因です。デバイスのレンタルやグループでの所有なども検討可能かもしれません。

データコストは大きな負担になるので、通信を使わないという選択肢も考えてみてもよいかもしれません。例えば、サムネイル画像でも使われているTalking Bookは村のコミュニティで共有され、スピーカーが内蔵され、1台で100人以上のリスナーにサービスを提供することができます。

4. 安全と期待

トレーニング教材を作りましょう。例えばViamo’s 3-2-1 serviceでは、インターネット、メール、検索といった基本や、詐欺やハラスメントにどう気を付けていくかなどについての教材が提供されています。多くの女性は新しいアプリを試す自信がなく、こういった層に対して、「インターネットでの一攫千金の話などはない」ことなどを適切に教えることにより、騙されて被害を受けることを防いでいくことが大切です。

つまり、デジタルが何をできて何をできないかを明確にし、安全で健全な利用を推進する必要があります。

5. フィーチャー・フォン

フィーチャー・フォン(日本でガラケーと呼ばれる携帯端末)は、まだしばらくはスマートフォンに完全に置き換わることはなさそうです。スマートフォンの端末の値段は着実に下がってきていますが、電池の持ちなどに関しては、フィーチャー・フォンの方が圧倒的に強く、特に電気のない地域・高い地域などでは、フィーチャー・フォンの需要はまだ継続すると思われます。

そのため、スマートフォンを前提としたサービスは貧困層には届きにくいということは理解しておくことが必要です。

6. 権力・規範の壁と事例の重要性

何百万人という女性が、文化・社会規範という壁によりテクノロジーへのアクセスを阻害されています。例えば、女性に教育は必要ないと考えている人たちなどが一定数おり、特に権力者がそのような考え方をもっていると厄介です。

こういった壁を取り払うためには、いかに女性がテクノロジーに接することが家庭やコミュニティレベルで利益になるかについて権力者(コミュニティリーダー、夫、父親)などに事例を用いて説得していくかが重要になってきます。

7. 適切なコンテンツ

女性がどういったコンテンツを望んでいるのかをしっかり考え、それをユースケースにしていくことが重要です。文字が読めない層などにアプローチしていくには音声コンテンツが効果的です。Talking Bookなどは歌やドラマなどのコンテンツを入れることで女性の興味を引くようにデザインされています。

また、女性の専門家が録音した健康や農業に関する音声メッセージは、女性のリスナーに受け入れられやすいこともわかっています。

8. 女性のリーダーシップ

こういったコミュニティはどんどん女性が運営していくべきではないでしょうか。こちらの事例のように、積極的に女性が運営やコンテンツ制作に関わっていくことで、より女性にとってアクセス可能なインターネットサービスへと変わっていくことが期待されます。

もちろん、こういった女性の活躍により、男性もインターネットやコンテンツのアクセスを通じて恩恵を受けることができます。

まとめと所感

今回の記事は、女性のデジタル活用についての記事を元に書きましたが、要約していて感じたのは、この問題はジェンダーだけではなく、広く貧困層向けサービスを検討するには考えなくてはいけないことが多く盛り込まれているなと感じました。

デジタル・ICT・DX・イノベーションなどのキーワードがついてしまうと、なんとなくハイテクなものを使わなければいけないといった幻想を抱きがちですが、開発途上国(特に農村部)においては、まだまだローテクなソリューションが現実的であり、きちんと現場のニーズを理解した上で解決策を提案していくのが重要だと思います。

この辺りは、昨今の民間連携が進むとより難しくなるような気もします。なぜなら、民間IT企業は(当たり前ですが)ハイテクサービスを売りにしており、そういったサービスの海外展開を期待しているからで、そういったサービスはインクルーシブではない可能性は高くなってしまいます。ですので、途上国の農村の女性といった人たちにサービスとして届けていくために、あえて一世代前の技術を用いたソリューションを提供していくのは、開発援助機関やNGOの大事な役割なのかもしれません。

キラキラした技術であることよりも、エンドユーザに着実に届くことの方が重要であることを忘れてはいけないと思います。

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