一昨日、このブログに書いたNHKの番組を見た。基本的には、ICTに特化した番組ではなく、中国がアフリカ諸国との関係を深めつつ、9億人のマーケットであるアフリカでのビジネスに力を入れているといったことを伝える内容だ。でも、ZTEという中国企業によるエチオピアの携帯電話通信網構築が事例のひとつとして取り上げられていた。
番組によるとZTEはエチオピア国内の携帯通信網構築を一社で独占して、現在事業にあたっている。一国の通信網構築を一社で独占するというは非常に珍しいことで、この成否が今後の中国とエチオピアのみならず、他のアフリカ諸国との付き合いにも影響してくるという。エチオピア政府とは、来年3月までにエチオピア全土の90%以上をカバーする携帯通信網を完成させる約束を結んでおり、約1000人の技術者を中国から動員し、うち半数が農村部で工事を進めている。
興味深かったのは以下の点;
- 中国国家開発銀行がエチオピア政府に約20億ドルを融資しており、それ故ZTEが一社独占しているという点。
中国国家開発銀行は世銀など他のドナーとちがって、政策には口を出さない点、また、融資までの手続きが迅速である点がエチオピア政府に気に入られている。いわゆるひも付き援助だけど、国際的な批判は気にしないのだろうなぁ。しかし、口出ししないで融資だけすることが本当に開発につながるのか・・・。 - ZTEは今後、エチオピア国内での携帯電話機製造にも乗り出すことを考えている点。
エチオピアに居た頃、PC工場とか、携帯工場とかがエチオピアに出来ればよいのになぁと感じていた。日本企業じゃないのが残念だが、エチオピアに精密機器の工場が出来るのは、大きな前進だと思う。 - 10年後のマーケット獲得を目指して、採算が取れなくてもエチオピアでの事業を成功させようとしている点。
目先のことだけでなく、10年先の9億人マーケットをターゲットに精力的に仕事をしている中国企業がかっこよく見えた(つい事業仕分けでキリキリやってる最近の日本と比べちゃいますね)。
他の事例として挙げられたザンビアの鉱山開発でも同じように思ったが、結局、手っ取り早く資金をGetし、自国の開発を進めたいと考えているアフリカの政治家と、アフリカを手中に入れたい中国政府&中国企業の利害が一致しているということなんだろう。中国は、アフリカ30カ国以上に合計80億ドル以上の融資をしており、今後も力を入れていく予定という。
アフリカの開発が進むのは良いことだが、一方で、この中国のやり方が本当にアフリカの将来のためになるのかはちょっと疑問も残る。中国は他のドナーとの強調よりも、自国の方針・利益に重きを置いている。例えば、上記の中国国家開発銀行のやり方は、本当に適切な方法なのか?と感じるし、実際、エチオピア人の多くは中国のやり方に賛同していない気もする。例えば、ZTEについては、ETC(Ethiopia Telecommunication Corporation=エチオピアの国営電話公社)を賄賂で見方につけているなんていうニュースもあるし、自分の滞在中(4年間)で、エチオピア国内で中国人労働者が良く言われているのを耳にしたことが殆どない。また、エチオピアでインフラ工事を実施している日本企業の方から聞いた話では、中国は資材から労働力まで、全部自国から持ってくるので、エチオピア人に落ちる仕事やお金が他国の企業が請け負う場合に比べて非常に少ないという。もしかしたら、ZTEも1000人の労働者(ちなみに番組によると給料は月12万くらい)を自国から動員するよりも、エチオピア国内で優秀な人材を雇うほうが、エチオピアの開発に貢献するのでは?という疑問も浮かぶ。
しかしながら、中国独自のアフリカ支援政策批判はさておき、中国のパワーはとにかく凄いと感じた。
コメント
[…] このブログでも紹介したエチオピアにおける中国政府の援助機関と中国の通信会社の取り組みのように、民間企業の途上国進出をODAでバックアップしているパターンは良くあるけれど、日本は他の援助国に比べると、その連携が強いとは言えない、と思う。 そんなに調べたわけじゃないけれど、元NEC副社長が書いた「現場百見 ビジネスは地球感覚」という本に、途上国の通信分野の国際入札でのNECの苦労が書いてある。ドイツ政府+シーメンス社の協力体制などと比較し、日本政府のバックアップの弱さが端的に描写されていた覚えがある。この本の受け売りだけれど、単純に情報通信分野でのODA案件を増やすとか、ODAの額を増加するだけでは不十分で、他国政府のように、案件数や額が多くなくとも、きっちりと相手国政府キーパンとのコネを作っておくというのが重要と言える。 […]
[…] ちなみに、エチオピアの携帯通信網を設置しているは中国企業。さらに中国は携帯本体や関連アクセサリをエチオピアで製造するための工場を建設しているという。このレポートは、「先進国にとっても、エチオピアは投資価値有り」とうたっているが、その投資機会は中国にもってかれてしまうのか。 […]