UNDP人間開発報告書2015からのICT4Dトピックス(その1)

最近、UNDP人間開発報告書「人間開発のための仕事」(2015年度の日本語版)を読んだ。第3章の「変化する仕事環境」という章に、思いのほかICT関連のトピックスが含まれていて面白かったので、2回に分けて内容を紹介したい。今回はこの報告書に書かれていたICT4D関連の事例をいくつか紹介し、次回はICTが仕事環境に及ぼす影響的なトピックスを紹介したい。

「技術革新」とか「デジタル時代の仕事」といった副題のついた内容のなかから面白いと思った点を以下記載します。まずはどんだけICTが世界(特に途上国)にも普及しているのか?という点。

  • 世界の携帯電話加入契約者数は、70億件を超え23億人がスマホを利用し、32億人がインターネットに繋がれている。(P101)
  • サハラ以南アフリカでは、2013年時点で3億1100万人だった携帯電話の』利用者数が2020年には5億4000万人にまで増える見通し。(P102, GSMS2014から)
  • 国際通話におけるスカイプの割合は、2005年の5%未満から2013年には約40%まで増加した。(P102, マッキンゼー調査から)

次に、ICT(携帯電話)の効果についてのざっくりした事例。

  • インドでは、農家や漁師が携帯電話を使って天候情報、気象情報の入手、卸値の比較をするようになり、収益が8%増加する一方で、情報へのアクセス向上により消費者価格はあ4%低下した。(P102)
  • ニジェールでは携帯電話の利用によって国内各地の市場における穀物の価格差が10%縮減した。(P102)
  • マレーシア、メキシコ、モロッコなど、さまざまな国において、インターネットを利用する中小企業は取引費用と市場参入障壁の縮減により、全体の平均値で生産性が11%上昇した。(P103)
  • 開発途上国におけるインターネットアクセスが先進国と同等の水準になれば、合計2兆2000億米ドルの国内総生産(GDP)と1億4000万人超えの新規雇用(うち4000万人はアフリカ、6500万人はインドにおいて)が生み出されるとの推計もある。開発途上国における生産性は長期的に25%押し上げられる。(P104)

続いて、クラウドソーシングの話からインパクソーシング事例を2つ。以前このブログでも紹介したSamasource以外にも上手く成功している事例があるんだなあ。3つめはおまけ。

  • Cloud factoryは、ケニアとネパールに約3000人の登録者を抱え、登録者の厚遇を通じてのサービス向上に取り組んでいる。(P107)
  • MobileWorksも同様の方針をとり、2010年にLeadGenusというプラットフォームを立ち上げ、50カ国にフルタイムの働き手を数百人抱えている。同社は退役軍人から難民まで不利な立場におかれた集団や社会的に排除されている集団に的を絞っている。(P107)
  • 国連ボランティアのオンライン・ボランティア・サービスは、2014年の数字で1万887人のボランティア(うち60%が女性)が自らの技能を通じて開発に関する仕事に貢献することを仲立ちした。(P111)

そして、3Dプリンターの話。

  • 世界最大級の3Dプリンター共有サービスの1つは、110カ国にある9000台の3Dプリンターをつないで時間貸しをしている。(P93)(どこの会社かまで書いてないけど、世界156カ国にある2万9000台の3Dプリンターを運営する3Dハブズという会社のことかと憶測。この会社のサービスについては、Newsweekのニュース「3Dプリンターがアメリカの製造業を救う」が面白い!)
  • 3Dプリンターで義肢を製作する世界初の3Dラボが南スーダンにある。この「プロジェクト・ダニエル」は、爆撃で両腕を失った少年ダニエル・オマーに義手を提供するために2013年に始まった。(P94) 冒頭の動画はこの「プロジェクト・ダニエル」紹介動画です。すげーな、3Dプリンター。

以上、事例紹介でした。「人間開発のための仕事」というテーマだけに、こういうテクノロジーがどう仕事に影響を与えるのか?というのが本題で、上記の事例はその前段的な位置づけ。1年前の報告書だけど新しい発見もあり面白かった。きっと今ならドローンについての記載も載るだろうな。

次回は、技術革新によって、従来の資本集約型・労働集約型の仕事から知識集約型の仕事へ変化してくことで、途上国の人達は仕事を失うのか?的な議論を紹介します。

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  1. […] 前回の投稿に続いての「その2」です。 […]

  2. […] 前回の投稿に続いての「その2」です。 […]

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