ここ最近読んだ本に「WORK SHIFT」と「BoPビジネス 3.0」がある。その両方でオープンイノベーションの話があった。オープンイノベーションって言葉は良く耳にして、なんとなく知っていると思っていたけど、本を読んで具体的な事例を知り、ここまで進んでいるのか!と驚いた。
両方の本で紹介されていたInnoCentiveというWebサイトにアクセスしてみた(JNEWS.comの説明によれば、世界で最初にオープン・イノベーションの仕組みを構築したのは、医薬品メーカー、イーライリリー社の社内ベンチャー事業として2001年に立ち上げられたクラウドサイトの「InnoCentive(イノセンティブ)」と言われている)。
起業、政府、NGOが抱える解決したい課題を掲載しており、その課題の解決策を募るサイトだ。見事問題解決が出来たら、各課題ごとに設定された報奨金が貰える。サイトの記載によれば、現在、問題解決に挑戦するSolverは380,000名以上登録されている。クラウドソーシングはアイデアのある人達が資金を集める為のサイトであるのに対して、InnoCentiveは資金がある人達がアイデアを集める為のサイトであると言える。
例えば、「壁掛けタイプの薄型テレビから電源ケーブル等のケーブル類をなくす方法募集:報奨金15,000USD」とか、「携帯電話でフィールド調査時に自然データ(CO2とか)を取得する方法募集:30,000USD」などの課題があり、課題以外にも「ジョイントベンチャーのパートナーを募集」といったものまで。世界規模の大手起業やNASAまでもがアイデア募集でこのサイトを利用している。
サイトには単に課題が掲載されているだけではなく、過去のベストプラクティス、参考文献、ウェビナー(Webセミナー)の案内、など、Solver達をサポートする情報も掲載されている。
また、「BoPビジネス 3.0」には同様のサービスをまとめたリストが載っていたので、その一部を以下に紹介(BoPビジネス 3.0のP119表4−3「バリューチェーンの各段階でインパクトを生み出している関連イノベーション」より抜粋)。
- TechScout: 研究開発の解決策のクラウドソーシング
- IdeaConnection: アイデアの市場および問題解決
- One Billion Minds: オンラインの(ソーシャルな)挑戦
- Global Innovation Exchange: オープンイノベーションの市場
- Atizo: オープンイノベーションの市場
- ideaken: コラボレーション型のクラウドソーシング
- Idea Bounty: アイデアのクラウドソーシング
- Challenge.gov: 政府の問題に対するクラウドソース型解決策
以前、自分もFOSS4Dの論文を書いたときに同じようなサイトがあればおもしろいと考えてたけど、こういうサービスが既にここまで盛り上がっているとは知らなかった。以下、思ったこと3つ。
- このようなサービスを使って世界中の誰もが(途上国の人でも)アイデア出しに参加出来るようになったのは凄い。でも、現実的に参加出来るのは一定のスキルがある人に限られてしまうので、スキルがある人達の活躍の場が増えただけ?さらに、アイデアを実現(製品化)出来るのは一定のリソースを持つ企業だけだと考えると、ちょっと残念(まぁ、企業が金だしているんだから仕方ないけど)。
- 日本企業もBOP市場への進出への関心が高くなって来ているけど、この手のサイトは英語が主。インターネットの世界では国境がなくなりつつあるけど、日本人にとっては言語のハードルがある。こういうサービスが広がって行くと、日本人は途上国の優秀な人材とも競争せざるを得ない状況になる(すでにそうなっている)。娘には英語をちゃんと勉強させよう。
- 途上国による独自の取り組みとしては、インドや中南米を中心にその国のオープンイノベーションやビジネスインキュベーションを促進するような政策もとられており、援助機関もそういうのを支援している(JICAもルワンダでやってるし、「BoPビジネス3.0」ではドイツGIZがチュニジアで行った支援が例示されている)。この点については、別の機会に投稿したい。
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