研究者に「翻訳こんにゃくは作れるのか?」と聞いてみた

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先日カナダでのHCI(Human Computer Interaction)の国際学会に行った際に、機械翻訳(Google翻訳や、音声翻訳アプリなど)の研究をしてる方と話す機会があり、率直に「AIの発達により他言語を勉強する必要が無くなる日は来るんですか?」と聞いてみました。(以下、他言語=英語と仮置きしてますが、他言語でも同様です。)

留学、駐在中の英語の苦労

その研究者の回答を書く前に、皆さん、私が経験した留学や駐在経験の中で、一番英語に苦労したのはどのケースだと思いますか?選択肢は以下です。

  • 専門用語が多用される大学の授業
  • 大学でのディスカッション
  • ビジネス(国際協力含む)でのディスカッション
  • 日常生活(買い物など)
  • レストランやバーでの会話

 

ドドドドドドドドド(ドラム音)

 

シャーン(シンバル音)

 

正解は、ダントツで「レストランでの会話」です。意外でしたか?レストランやバー、特に混んでる時に英語でコミュニケーションを取るのには、本当に苦労しています。(ちなみに次点は「大学でのディスカッション」です。)

理由はいくつかあります。

まず、レストランやバーは、周りがうるさいことが多い。特にスポーツ放送などあろうものなら、大きな声出さないと通じ合えない中、英語で会話をするのは本当に大変でした(日本語だと不思議と聞き取れるんですよねぇ・・)。

次に会話のバリエーション。酒も入ってるので、下ネタから先生の愚痴、そして政治談義まで、どの角度からボールが飛んで来るか分からず、話についてけないことがままありました。

そして最後に言葉のフランクさ。こういう場なので笑い話も多く、必然的にスラングが増えてきます。普段はNon-Native向けに言葉を選んでくれる人達もくだけた言葉を使うようになり、理解できないことがままありました。

補足:スラングに関連して、(特に)アメリカに住む方に必ブックマークのサイトがあります。Urban Dictionaryというスラングのオンライン辞書です。普通の辞書で引いても??という単語などはここで引くと、意外と載ってたりします。もちろん下ネタも・・。

夢の翻訳ツールはできるのか?

さて、本題の翻訳こんにゃくに戻ります。機械翻訳の研究者に聞いた「翻訳こんにゃくは作れるのか?」の答えは「Yes and No.」でした。なんのこっちゃという感じですが、以下の通り説明します。

まず、機械翻訳のレベルは非常に上がってきており、簡単な、または正しい音声翻訳についてはかなりの精度で翻訳できるようです。ですので、簡単な英語、例えば空港案内やタクシーで「どこまで行きますか?」的なものであれば、同時通訳できるレベルになっています(実際に携帯アプリを活用してるタクシー運転手を見たことあります)。また、正しい言葉についても翻訳レベルは上がってきていて、例えば国際会議のような場やスピーチなどはアプリが通訳してくれる時代がもうそこまで来てるかもしれません。

しかし、以下の2つのシチュエーションについては、「全くもって使い物にならない」のが現状のようです。

騒音時の英語

レストランやバーなどの騒がしい場所での機械翻訳は、現状全くダメだそうです。確かに、色々な言葉が飛び交っている騒がしい状況では、我々も通話者の口元なども見ながら必要な言葉を拾っている気がします。

くだけだ英語

これも現状の技術では、難しいみたいです。確かに、例えば、「いやこれ、ヤバいね、マジで。」という言葉をアプリが聞き取った場合、訳せないですよね。「いや」は意味ないし、「これ」もどれだかわかんないし、「ヤバい」も良いのか悪いのかわからないし、「マジで」もただの強調です。主語もなく、文法的にもめちゃくちゃです。多分これを正しく訳すためには、その前後の文脈も機械的に処理した上で判断せねばならず(人間は頭の中でそれをやっている)、非常に高度なロジックが必要になると思います。

まとめ

翻訳こんにゃく(高度な機械翻訳)は、簡単な、または正しい言葉に限ってはできうるが、騒がしい場所やくだけた言葉遣いをする場所では、まだまだ技術的にハードルが高いそうです。つまり、ビジネスや国際会議など出張や観光だけの目的であれば、英語の勉強が不要な時代はそこまで来ているかもしれません。しかし、友人だちとバーなどでご飯を食べながら、くだらない話をするためには、英語を勉強し続ける必要がありそうです。

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