1.8億ドルを調達したアフリカIT人材育成会社とは??

アフリカ

こんにちは、狩野(Kanot)です。私の実務、研究の柱の一つは開発途上国のIT人材育成なのですが、その分野で、Facebook関連財団から2,400万ドルの出資を受け、これまで(Series Dまで)総額で1.8億米ドル!もの資金調達に成功している会社があると聞き、その会社について調べてみました。

Andelaとはどんな会社か

その会社はAndelaという企業で、「アフリカのITエンジニアを育成して、アメリカのIT企業とリモートで繋ぐ」というビジネスをしています。(写真中央の青Tシャツが創業者のJeremy Johnson。)2014年創業で、HPによると本社はInternet(いいですね!)で、ニューヨークを中心にケニア、ウガンダ、ナイジェリア、キガリにオフィスを持ち、サービスを展開しているようです。

ここまでだと、よくある人材育成&アウトソーシングビジネスなのですが、なぜAndelaは多額の投資を受け、急拡大を続けているのでしょうか。

途上国でのIT人材育成ビジネスやっている方はご存知と思いますが、このビジネスは、育成にコストと時間がかかることなどから、収益化に苦労しているケースが多いんです。では、さっそくAndelaのビジネスを見てみましょう。

Andelaのビジネスの特徴

  • 6ヶ月間の無料ITトレーニング (倍率100倍以上)
    創業した2014年から通算で13万人以上の応募の中から、これまで1,100人のアフリカ人材を採用してきたそうです。倍率100倍を超える選考を勝ち抜いた人材は、各国のAndelaオフィスに衣食住提供で支援を受け、実践的なIT技術・ビジネススキルのトレーニングを受けます。
  • 4年契約でその間の仕事はAndela経由
    Andelaは4年契約という雇用形態を結んでおり、研修後はAndela経由で、アメリカのIT企業とリモートで仕事をするようです。勤務地は自分の国のオフィスになります。4年後についてはフリーランスになるもAndelaで働き続けるも、米国企業等に就職するも自由とのこと。
  • アメリカの著名なStart-upと働くことで経験を積める
    おそらくこれが大きな魅力の一つかと思いますが、GitHubなど米国の勢いあるスタートアップと、アフリカにいながら直接働くことができます。こういった経験は、彼らの今後のキャリアアップには魅力的ですよね。
  • 原則現地で完全リモートの業務
    これはメリットとデメリットと両方あると思いますが、雇用期間である4年間はローカルオフィスで米国企業とリモートで働く形になるようです。内容が、単純なアウトソーシング作業になるのか、本当にチームの一員として働いていくのかはよくわかりませんでした(おそらくレベルに応じて両方あるのではと思います。そうしないとエンジニアから苦情が出るでしょうし。)。

個人的に興味深い点

  1. 育成から業務までコミットするエコシステム
    6ヶ月のトレーニングと4年間の雇用(もらえる給料レベルは非公開)が保証されているので、応募者は安心してアプライできると思います。多くの開発途上国では、育成か雇用のどちらかが欠けているケースが多く、Andelaのエコシステムはうまくできていると感じています。
  2. 収益モデル
    収益モデルとしては、HPには記載がありませんでした。他のサイトではいくつか記載はあったものの、情報ソースが不明だったのでそれは記載しないことにします。個人的に推測するに、6ヶ月の研修後の仕事でAndelaがマージンを取ってアフリカのエンジニアに発注する、ということと思います。おそらく4年契約にしていることから、トレーニングは先行投資の意味合いが高い(早期に辞められては先行投資分が回収できない)のだと思います。
  3. 日本向けIT人材育成で手間がかかっている部分をやっていない
    日本企業向けのIT人材育成や就職支援の場合、いろいろと手間がかかる業務があります。例えば、日本語教育、就職マッチング、ビザ取得支援、日本での生活立ち上げ支援などです。Andelaはその辺りは省いたモデルになっているので、効率的だなぁと感じました。
  4. やはり英語は便利で有利
    私が主に関わっている、日本企業と仕事をすることを目指したIT人材育成では、まだまだ日本語力を求められるケースも多いです。その条件を外すだけで、対象者は圧倒的に拡大するし、ブリッジエンジアも要らないし、ブルーオーシャンになりうるなぁと思いました。また、アフリカは英語が話せる人材は非常に多いので、横展開も比較的容易であり、ナイジェリアの経験をケニアに展開、などもしやすいと思います。

おわりに

教えるだけでなく、その後の仕事に直結させる、というAndelaのビジネスモデル、これって、本来日本企業が得意としてた新卒採用のモデルとすごく似てますよね(自社で育てて活躍してもらうモデル)。これは何を意味するのでしょうか?

日本ではこのモデルが最近は限界を迎えつつあると言われています。一つの仮説ですが、こういった人材育成からその後の業務まで保証するモデルというのは、スキルある若者が少なく、仕事も少ないという開発途上国(当時の日本もそうだったように)においてはワークするモデルなのかもしれません。ある程度発展してくると、自己投資して学べるようになるので、仕事も自分で選びたくなるでしょうし。

そのうちどこかでAndelaと接点持って、意見交換してみたいなぁと思いました。

写真はTechnext.ngより引用させていただきました。

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