ノーベル経済学賞を開発経済学者(Banerjee, Duflo, and Kremer)が受賞!

アカデミック

こんにちは、Kanot(狩野)です。ビッグニュースが飛び込んできました。2019年のノーベル経済学賞ですが、以下の開発経済学者3名が受賞しました!

  • アビジット・バナジー(Abhijit Banerjee):MIT教授
  • エスター・デュフロ(Esther Duflo):MIT教授
  • マイケル・クレマー(Michael Kremer):Harvard教授

この3名は国際開発のプロジェクトのインパクトを定量的に示す(因果関係を証明する)インパクト評価ためにランダム化比較試験(RCT)という手法を国際開発業界に広めた人たちで、その功績が認められての受賞のようです。

ランダム化比較試験という手法は、業界ではRCTと呼ばれていて、特定のターゲットをランダムに2つのグループに分け、片方に何かしらのプロジェクト(Intervention)を行い、実施後の両グループの成果を比較し、統計的に分析するという手法です。インパクト評価やランダム化比較試験については、以下の記事で解説しています。

Banerjee教授とDuflo教授はこの本で有名ですね。開発経済学の手法、特にランダム化比較試験(RCT)を用いたインパクト評価について、数式を使わずに説明してある本ですので、国際開発の実務家の皆さんは一度読んでみると良いと思います。

また、ちょうど私が先日ブログで絶賛したJ-PALのポリシーブリーフですが、このJ-PAL(The Abdul Latif Jameel Poverty Action Lab)を立ち上げたのがまさにBanerjee教授とDuflo教授です。やはりインパクト評価という学術的なアプローチだけでなく、それをわかりやすく実務家や政治家にインプットしていったというのも評価された一つの点なのではと思います。

この3名の中でも特に特筆すべきはDuflo教授で、彼女は現在46歳で、ノーベル経済学賞としては最年少での受賞(かつ女性としては2人目)とのことなのですが、この人の出世スピードはすさまじく、MITの経済学部という最高峰で26歳で助教、29歳で准教授、そして若干31歳で教授まで登りつめています。

彼らの論文の中でも最も興味深いものの一つは、「貧困の罠(Poverty Trap)」は存在しない、ということを6カ国でのRCTで因果関係を検証し、Science誌に掲載されたものでしょうか。長い間、経済学者の間で定説とされた貧困の罠(貧困状態に陥ると負のスパイラルが働き、貧困から抜け出せないという説)を覆すという試みは大変なアプローチだったんだと思います。

https://science.sciencemag.org/content/sci/348/6236/1260799.full.pdf

もしこの受賞や記事を読んでランダム化比較試験(RCT)を用いたインパクト評価に興味を持ち始めた方には、以下のMOOCSがおすすめです。私も数年前に受講しました。(前と変わってなければBanerjee教授とDuflo教授も講師として登場します。)

404 | edX

画像はCNNより転載しました。

関連記事:J-PALのポリシーブリーフが実務と研究の接点になっているという記事です。

関連記事:バナジー氏のウェビナーの報告メモ

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