1GBの通信料はいくら?国別格差、なんと最大300倍

データ
要約

携帯電話は世界中で普及してきたものの、通信料金の格差は非常に大きく、最安値のインド(USD 0.09)と最高値のマラウイ(USD27)の格差は300倍に上る。各国間のデジタル・デバイドはいまだ深刻な問題であり、デジタル経済の恩恵を受けれる国と受けれない国での格差が大きくなっている。

こんにちは、Kanotです。昨今の携帯電話の普及は本当に凄まじいですよね。アジアはおろか、アフリカの田舎に行っても携帯電話を持っている家庭が本当に増えてきました。私が住んでいたバングラデシュなどでも、首都ではリキシャ運転手やお手伝いさんなどの、あまり裕福ではない層でも、大人は一人一台は当たり前の状況でした。

あぁ、よかった。みんな携帯電話持てるようになって、デジタル・デバイド(情報格差)はなくなったんだね。

ちょっと待ってください。そんな簡単な話ではないんです。確かに、一昔前の、インターネットにアクセスできる人vsできない人、携帯電話を持っている人vs持っていない人、といった単純な形のデジタル・デバイドは一定程度解消されてきたと思いますが、今度は目に見えにくい形のデジタル・デバイドが依然として残っています。

今回は、目に見えにくい形のデジタル・デバイドとして、携帯電話の通信料に着目してみます。Visual Capitalistというサイトの「What does 1GB of mobile data cost in every country?」という記事を参考にしたもので、155か国の携帯電話の通信料を比較したものです。

通信料が安い国トップ5

早速、まずは通信料が安い国からいきましょう。以下の値段は1GBあたりの通信料です。

上位国名1GBの通信料(USD)
1インド0.09
2イスラエル0.11
3キルギス0.21
4イタリア0.43
5ウクライナ0.46

インドの1GBあたり9セントというのは、ちょっと衝撃的ですね。携帯電話で10GBプランで1ドルくらいということでしょうか・・。なお、インドに関しては注釈がついていて、非常に熾烈な民間企業同士の値引き競争があるようで、調査時ではこのような価格になっていたようです。ちなみに日本は、USD 3.91で155カ国中108位で、通信料が高い国一つになっています。

後日追記:ブログ公開後に、インドでは月額プランなどにすると、1GBあたり5セントのプランもある、との情報をいただきました。

通信料が高い国トップ5

では、続いて通信料が高い国を見てみましょう。

下位国名1GBの通信料(USD)
1マラウイ27.41
2ベナン27.22
3チャド23.33
4イエメン15.98
5ボツワナ13.87

紛争中のイエメンを除くと、マラウイ・ベナン・チャド・ボツワナ、とサブサハラアフリカの国がランクインしています。最も料金が高いマラウイ・チャドと、最も安いインドを比べると、その差なんと300倍です。つまり、同じ動画を一つ再生するのに、マラウイではインドの300倍ものお金を支払う必要があるということになります。

このことから推測されることは、マラウイの人が多く通信料を払っているのではなく、動画などの高容量のコンテンツに(料金が高すぎて、またはスマホを持っていないせいで)アクセスできていない人が多い、というまさにデジタル・デバイドが発生しているということになるかと思われます。

後日追記:ブログ公開後に、このデータにはジンバブエが含まれておらず、ジンバブエが1GBあたりUSD75ほどで最高値ではないかとの情報をいただきました。確かに元記事(155カ国)にはジンバブエは含まれていませんでした。

対一人当たりGDPに変換すると

先ほど、マラウイとインドで1GBあたりの通信料が300倍と書きましたが、所得差が考慮されていないため、「一人当たりGDPに対する1GBの通信料」、つまり、「平均的な年収の人にとって、1GBの通信料が年収の何%にあたるのか」を先ほどのトップ2とワースト2の国で比較してみました。(ここからは私の独自の計算ですので、間違ってたらごめんなさい。)以下の数字は、「1GBあたりの通信料 / 一人当たりGDP (世銀2020) X 100」です。

国名1GBの通信料 / 一人当たりGDP X 100
マラウイ6.7%
ベナン2.2%
インド0.0042%
イスラエル0.00025%

むむむ・・・もはや数字の差がありすぎてよくわかりませんが、つまり、マラウイの平均的な年収の人にとっての1GB通信料は年収の6.7%にあたるのに対し、イスラエルのそれは0.00025%ということになります。マラウイとイスラエルを比べてみると、26,800倍という数字が出てきます。凄まじい格差です。(ほんとに計算あってるのかと疑うレベル・・)

補足と関連記事

こういった差を数字だけで見ると途方もない格差のように見えますが、5Gなどの高速通信が普及すればするほど、通信単価は下がるものと思われるので、ここで挙げた数字がそのままの格差ということでもなさそうなことは注意しておいた方いいと思います。つまり、例えば、5G通信をしているイスラエル人にとって1GBというのは微々たる通信量ですが、3G通信をしているマラウイ人にとっての1GBは非常に大容量のデータになるという点です。

とはいうものの、各国間のデジタル・デバイドはいまだ深刻な問題であり、デジタル経済の恩恵を受けれる国と受けれない国での格差が大きくなっているというのは紛れもない事実なのだと思います。そしてこの記事では触れませんでしたが、同じ国の中でも富裕層と貧困層、都市部と地方部、などでも歴然とした格差が存在していると考えられます。

もっと網羅的なデジタル経済での格差についてご興味ある方は、先日Tomonaritが書いていた記事が参考になります。世界の大半の国がデジタル経済に参加できる土台は整ってきたものの、各個人レベルでは、そういったデジタル経済の恩恵を受けれない(むしろ受けれないことで格差が広がっている)状況も起きてきてる、ということを紹介した記事です。

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コメント

  1. Ozaki Yuji より:

    興味深い記事をありがとうございます。

    もうひとつパラメータを追加するならば、下り回線の平均速度(通信容量の消費可能速度)でしょうか。以前とは異なり、通信パケットを消費できるコンテンツもずいぶん増えたことですし。
    日本なら1GBの通信量などなんの工夫もなく短い実時間でサラッと消費できますが、インドの特定地域では、通信容量を消費するのに根性と資金(長い実時間や高価格な契約など)が必要なのかもしれませんね。
    少し前、ものすごく通信単価の安いSIMが雑誌の付録などで広くバラ撒かれましたが、そもそも通信速度が出なくて容量を消費できなかった(繋がる時間帯や場所を見極めるのが大変だった)、というネタがあったことを思い出しました。

    東京都内で在宅勤務や休校が増え始めて以降、ラップトップPCやWebカムが一気に品薄になったり、回線工事が増えたりしたようです。「デジタル経済に参加できる土台」そのものは開かれているものの、意外と日本でも世帯におけるデジタル機器やインターネット通信に対する支出の優先度(限りある収入をどのような支出に配分するか)はそんなに高くなかったのかもしれません。
    日本の貧困化を語る前に、日本ではPCや通信回線は仕事をする場所の据え置き資産(製造・生産設備)なのかもしれない…生産性向上のパーソナルアシスタントではなく。

  2. Kanot Kanot より:

    Ozakiさん、コメントありがとうございます。確かに!値段、インフラ(3G, 4G, 5G)、デバイスに加えて、通信速度というのはテクノロジーの恩恵受ける上での重要なパラメータの一つですね。そのいい統計情報を探すのは至難の技ですが(通信会社、有線・無線でばらつき多そうですしね)、確かに影響大だと思いました。ありがとうございます。

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