国際開発機関のイノベーション・ラボは消えていってしまうのか??

イノベーション・新技術

こんにちは、Kanot(狩野)です。2021年の6月に以下のICT4Dの歴史に関するブログを書きました。

その記事では、デジタル技術と国際開発について、2000年頃に大いに盛り上がった時期があり、多くの国際開発機関がイノベーション関連部局を立ち上げるも、その後に消えていってしまったICT4Dの歴史を振り返りました。

そして同時に、また2020年頃にかけて多くの国際開発機関でイノベーション関連部局が立ち上がっているという話を書きました。JICAではSTI・DX室、世界銀行ではTechnology & Innovation Lab、ユニセフではOffice of Innovationなどがそれにあたります。

そんな中、それらのイノベーション関連部局がまたもや消えつつあるのではないか、という問題提起をした記事が2023/3/16にアップされていました。記事元は、いつもICT4D関連のニュース情報を配信し、本ブログでもたびたび取り上げさせていただいている ICT Worksです。

記事名はまさにそのままで「The Rise and Fall of Innovation Labs in International Development(国際開発におけるイノベーション・ラボの隆盛と衰退)」となっています。サムネイルも本記事から引用しています。

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以下、この記事をまとめてみます。


「イノベーション」をキーワードに、ここ10〜15年で様々な開発機関(国連機関、二国間援助機関、NGO等)がイノベーション関連部局を立ち上げてきた。特に民間企業の力を活用する新しいパートナーシップの形としてテクノロジーを用いた国際開発のイノベーションが熱狂的に受け入れられてきた。

しかし、この5年ではそれらのイノベーション関連部局は急速に輝きを失っているように見える。組織が静かに閉鎖されていたり、他の部署に統合されたりしている。先駆者であったUNICEFもあまりイノベーションについて触れなくなってきた。

ではなぜ、イノベーション関連部局を国際開発関係組織はこぞって立ち上げ、どんどん閉鎖するような動きになってしまったのだろうか?

一つ目の理由は、援助機関の官僚的な組織体制である。援助機関のような大規模な組織では一長一短では組織文化を変えられない。そのような機関において、イノベーション・ラボのような独立チームを作ることはマネジメント層には魅力的に映ったのだろう。しかし、そのような独立チームは大きなインパクトを残すことは難しく、しばらくたつと予算申請時のカット対象になってしまうのである。

二つ目の理由は、政治的な位置付けである。イノベーション・ラボのような組織を作るには、かなり政治的なリーダーシップが必要となる。これは逆にいうと、その力を失うと、その立ち位置が難しくなるということでもある。オーストラリアの例では、InnovationXchangeを主導した大臣が失脚してからは組織が長く続くことはなかった。

三つ目の理由は、イノベーションという言葉の持つ曖昧さである。イノベーションという言葉は非常に魅力的だが、実体が何を指すのかは曖昧である。おそらく多くの人がイノベーション自体には賛成のはずである。しかし、それは官民連携のことを指すかもしれないし、アプリ開発なのかもしれない。これが、イノベーション・ラボのインパクトに対する期待に関する乖離につながる。


以上がざっくり要約でした。興味ある方はぜひ原文を読んでみてください。官僚的な組織体制、政治的な位置付けの影響、そしてイノベーションの曖昧さ、という3点がイノベーションラボの難しさとして挙げられていましたね

いずれもの論点も、さもありなんという話でもあり、この辺りは、実際に働いている方の意見も聞いてみたいですね。果たしてこういったイノベーションの動きが持続的なものになりうるのか打ち上げ花火で終わってしまうのか、興味あるところです。

また、個人的に気になるのは、似たような言葉と個人的に考えるDXやSDGsに関する動きです。これらのキーワードは、イノベーションと同じように「やや定義が曖昧で、誰もがコンセプトには賛成する」キーワードたちであり、同じような道を辿ってしまうのでしょうか?

一方、DXはデジタル化、ICT化という比較的わかりやすい目標を伴っており、SDGsは会社の評価や環境などにつながりうるものであるので、両方ともイノベーションよりは具体的な気はするものの、似たような匂いも残っており・・・・。

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