塩野義製薬がタンザニアで下痢予防のためのアプリ開発を発表

アフリカ
Source: https://newsjp.castalia.co.jp/2023/12/mother-to-mother-shionogi-project.html

ども、Tomonaritです。先日、今年最後の投稿といっていたのですが、また投稿しちゃいます。

塩野義製薬がモバイルアプリをタンザニアで展開

塩野義製薬がタンザニアでお母さん向けのモバイルアプリを展開するというプレスリリースを出しました。

「Mother to Mother SHIONOGI Project」第三期事業における連携事業の契約締結について
– タンザニアでの下痢症予防を目的としたアプリ開発 –

Source: https://www.shionogi.com/jp/ja/news/2023/12/20231222.html

下痢症予防を目的としたアプリ開発事業をスマホ普及率が高まっているタンザニアで開始し、その効果を検証した上で、他のアフリカの国や地域での下痢症予防活動も検討していくとのこと。子どもの下痢症は、母親の疾患や衛生等に対する知識や母乳育児の開始時期が異なることなどが関係しており、その対策として母親向けのアプリでの情報提供などを行うようです。

個人的な期待感

日本の製薬会社がこういう事業に乗り出すようになったんだなぁと時代の変化を感じつつ、以下、思った点&期待感を書いてみます。

◾️大企業とスタートアップの連携
このモバイルアプリを開発しているのはAfrican Mothersという日本のスタートアップです。大企業とスタートアップの連携という点で時流にのっている感があります(オープンイノベーションとはどこにもかいてないけどそういう要素もありそう)。

◾️アカデミアの参加
京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科准教授の原田英典氏が参加している点も良いなと思いました。アフリカ研究といえば、この京都大学が研究科が有名ですが、本当に現地に入り込んで調査・研究をしているイメージです。私もこの研究科出身の研究者を何人かしっていますが、みんな変人級に現地に入りこんでいます(笑)単に産学連携というだけでなく、そういう途上国の現場を知る人が参加しているのは、デザイン-リアリティ ギャップの解消に役立つはず。

◾️キャスタリア
また、現場を知るステークホルダーという意味では、アプリ開発を行うAfrican Mothers社も然り。同社はキャスタリアという会社の100%子会社で、キャスタリアはケニアやエジプトでJICAと連携してモバイルラーニングやプログラミング教育といった事業を展開している、アフリカに慣れている会社です(ケニアに現地法人もあり)。そのノウハウが本事業でも活かされるのでしょう。私もよく知っている会社さんだけに期待が膨らみます。

◾️公的資金なし
JICAや経産省などの公的資金が絡まない取り組みという点も特徴的かと思いました。この手の取組は公的資金を利用するケースが多いかと思います。それはそれで、金銭面のメリット以外にも相手国政府機関とのコミュニケーションが円滑になる点などメリットは大きいですが、他方でビジネスではない公的調査という衣をまとう故のデメリットもあります(例えば、調査中にビジネスとしての利益をあげるなどは基本NG)。本件のように完全に民間企業としての活動の方が、持続性につながるビジネスモデルをより具体的に確立することが出来るのではないか、という期待感があります。

と、かなり個人的な想いも入りますが思ったところを書いてみました。

タンザニアのスマホ普及率は?

おそらくこのプレスリリースを見て、「タンザニアのスマートフォン普及率ってどんなんなんだ?」と思った方は多いかと思います。そこでちょっとググってみました。GSMAの「The Mobile Economy Sub-Saharan Africa 2023」によるとタンザニアのスマホ普及率は2022年時点で50%。2030年には91%に達する見込みです。2030年の世界平均(92%)と比較するとほぼ同じレベルですね。現時点のスマホ普及率は低めでも、数年後を見据えると今から参入しておかないと数年後には「時すでに遅し・・・」となる市場なのだと思います(おそらくこの分野に詳しい玄人さんの中には、すでに欧米企業や中国企業に比べると日本企業は出遅れていると感じている人は多いとも思います)。

Source: https://www.gsma.com/mobileeconomy/wp-content/uploads/2023/10/20231017-GSMA-Mobile-Economy-Sub-Saharan-Africa-report.pdf

(話はそれますが、ITUとかの国連機関よりもGSMAって本当にこういう情報を一番調べている気がします。すごいなぁ。一度、GSMAと仕事をしてみたい。)

また、この情報収集中にアフリカで中古車ビジネスを展開する「BE FORWARD」の「サハラ以南アフリカの携帯電話ユーザー数とスマホ普及率:アフリカで進むデジタル化の今」という記事も見つけました。参照しているデータがGSMAの2021年のものですが日本語でまとまっていて興味深いので紹介してします。

携帯端末のうちスマホの割合は2020年で48%、2025年には全体の64%がスマホになると予測されています。なかでもスマホ普及率が高いのが、ナイジェリア、南アフリカ、ケニアの三か国です。2025年にはナイジェリアで1億6300万件、南アフリカで8900万件、ケニアで5200万件の回線がスマホからになると予測されています。

2020年にサハラ以南アフリカで、モバイル産業から生み出された付加価値は1320億米ドルです。これはこの地域のGDPの8%にあたります。

2022年のタンザニアの携帯回線数は5300万件で、これは人口の86%にあたります。インターネット普及率はエチオピアと同じく25%程度です。

https://africabusiness.beforward.jp/know-how-mobile-economy/

ICT4D的な話

最後に少しICT4Dっぽい話を書いてみます。母親向けのモバイルアプリでは、例えば「子供が生活しているエリアの汚れによって、糞便の微生物がどのようなルートで口に入って下痢になるのかをアニメで分かり易く母親に伝えていく」ような情報発信をしていくようです(医薬通信社のWebサイトから)。

詳細は分かりませんが、おそらくユーザーであるお母さんが投稿したりSNS的にコミュニケーションしたりという機能もあるのかなと憶測します。こういうツールの場合はできるだけユーザーを情報の受け手としてだけでなく情報の発信者・クリエイター・プロデューサーとして参画させることが持続性や成功につながるのだろうと思います。以下の図はマンチェスター大学のRichard Heeks教授が提唱する「Ladder of ICT-Related Roles」といういうのもので、ユーザーにより上位の役割・権限を与える方がICT4Dプロジェクトは成功するといったメッセージだと私は解釈しています。例えば、上記の例ならば、アニメの声を現場のお母さんにやってもらって製作者として名前を明記するとか、動画であれば現地のお母さんに出演してもらうとか、そういうことが出来ると現地の方々も「おっ!見てみようかな」という気持ちが高まるんじゃないでしょうか。

Source: https://ict4dblog.wordpress.com/2014/07/08/understanding-ict4d-and-capabilities-via-user-roles/

以上、思った点をつらつらと書いてみました。このアプリが展開された後、その利用データを活用した新たなビジネスがまた繋がるのだろうと思います。その点については特にプレスリリースに記載はなかったですが、そこも期待したいですね。

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