Sustainable Development GoalsとICT

3. その他

SGDs

9月25日の国連総会にてSDGs(持続可能な開発目標:Sustainable Development Goals)が最終合意されました。MDGsに代わって2016年1月から2030年までの15年間、これが国際社会の大目標になるってものです。MDGsが8つのゴールだったのに比べてSDGsは17つのゴールを設定しており、より包括的になっている点(環境問題など途上国だけじゃなく先進国も取り組むべき事項が含まれてる)が特徴でしょうか。

17つのゴールは以下のとおり。

  • 目標1:あらゆる場所で、あらゆる形態の貧困に終止符を打つ(End poverty in all its forms everywhere)
  • 目標2:飢餓に終止符を打ち、食料の安定確保と栄養状態の改善を達成するとともに、持続可能な農業を推進する(End hunger, achieve food security and improved nutrition and promote sustainable agriculture)
  • 目標3:あらゆる年齢のすべての人の健康的な生活を確保し、福祉を推進する(Ensure healthy lives and promote well-being for all at all ages)
  •  目標4:すべての人に包摂的かつ公平で質の高い教育を提供し、生涯学習の機会を促進する(Ensure inclusive and equitable quality education and promote lifelong learning opportunities for all)
  •  目標5:ジェンダーの平等を達成し、すべての女性と女児のエンパワーメントを図る(Achieve gender equality and empower all women and girls)
  •  目標6:すべての人に水と衛生へのアクセスと持続可能な管理を確保する(Ensure availability and sustainable management of water and sanitation for all)
  •  目標7:すべての人に手ごろで信頼でき、持続可能かつ近代的なエネルギーへのアクセスを確保する(Ensure access to affordable, reliable, sustainable and modern energy for all)
  • 目標8:すべての人のための持続的、包摂的かつ持続可能な経済成長、生産的な完全雇用およびディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)を推進する(Promote sustained, inclusive and sustainable economic growth, full and productive employment and decent work for all)
  •  目標9:強靭なインフラを整備し、包摂的で持続可能な産業化を推進するとともに、技術革新の拡大を図る(Build resilient infrastructure, promote inclusive and sustainable industrialization and foster innovation)
  •  目標10:国内および国家間の格差を是正する(Reduce inequality within and among countries)
  •  目標11:都市と人間の居住地を包摂的、安全、強靭かつ持続可能にする(Make cities and human settlements inclusive, safe, resilient and sustainable)
  •  目標12:持続可能な消費と生産のパターンを確保する(Ensure sustainable consumption and production patterns)
  •  目標13:気候変動とその影響に立ち向かうため、緊急対策を取る(Take urgent action to combat climate change and its impacts)
  •  目標14:海洋と海洋資源を持続可能な開発に向けて保全し、持続可能な形で利用する(Conserve and sustainably use the oceans, seas and marine resources for sustainable development)
  •  目標15:陸上生態系の保護、回復および持続可能な利用の推進、森林の持続可能な管理、砂漠化への対処、土地劣化の阻止および逆転、ならびに生物多様性損失の阻止を図る(Protect, restore and promote sustainable use of terrestrial ecosystems, sustainably manage forests, combat desertification, and halt and reverse land degradation and halt biodiversity loss)
  • 目標16:持続可能な開発に向けて平和で包摂的な社会を推進し、すべての人に司法へのアクセスを提供するとともに、あらゆるレベルにおいて効果的で責任ある包摂的な制度を構築する(Promote peaceful and inclusive societies for sustainable development, provide access to justice for all and build effective, accountable and inclusive institutions at all levels)
  • 目標17:持続可能な開発に向けて実施手段を強化し、グローバル・パートナーシップを活性化する(Strengthen the means of implementation and revitalize the global partnership for sustainable development)

ゴールそのものの中でICTに直接関連した記載がないけど、逆に言うとツールとしてのICT活用はこれらのどのゴールについても期待出来るってことだと思います。「これら17つのゴールを達成するためにICTがどう活用出来るのか?」という点について、NetHopeというアメリカのNGOがMicrosoftやIntelといった企業の協力のもと「SDG ICT Playbook」なるものを作成していました。

SDG-playbook-purpose

SDG-playbook-purpose

Playbook(脚本)という名の示すとおり、ICTが活用され得るシーンを具体的に示唆したものでなかなか面白い。各ゴールについてのICT活用を考える際のスタートポイントに出来そうなものです。

そして、この「SDG ICT Playbook」を見て感じたのが、具体的なICT技術として取り上げられているものが自分がICT4Dに関心を持ち始めた10年前とは大きく変わって来たという点。モバイル、ソーシャルメディア、クラウドコンピューティング、ビッグデータ分析、3Dプリンタ、スマートシステム、衛星技術などが各ゴールに絡む各セクターでどう活用出来るかが紹介されているのですが、ビッグデータとか3Dプリンタとか、これから途上国での活用が本格的になっていく技術として自分ももっと勉強しないといけないと感じたりしています。

Zuckerberg SDG

また、9月26日の国連民間セクターフォーラムではFacebook CEOのマーク・ザッカーバーグ氏が「世界をつなぐことは、私たちの世代の基本的な挑戦の一つです」という基調講演を行っており、Facebook上でも下記のメッセージを発表していました。

By giving people access to the tools, knowledge and opportunities of the internet, we can give a voice to the voiceless and power to the powerless. We also know that the internet is a vital enabler of jobs, growth and opportunity. And research tells us that for every 10 people connected to the internet, about 1 is lifted out of poverty.

インターネットへのアクセスを普及させることがダイレクトに貧困削減に繋がるのか?については、個人的には懐疑的な意見ですが、国連民間セクターフォーラムでの基調講演がFacebook CEOによって行われているという点にはちょっと興奮しました。

そういえば2016年度の世界開発報告(World Development Report)のテーマもICT。副題が「Digital Dividends」ってなっており、上記の基調講演の件とともに、2000年頃のように途上国開発におけるICT活用の波がまたくるのか?と期待したいです。

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3. その他

コメント

  1. Hitoshi UEDA より:

    ロンドン大学ロイヤルホロウェイ校の名誉教授 Tim Unwinのブログによれば、ICTの利活用はゴールには入っていませんが、その下のターゲット目標で4つほどICTに言及されていますね。

    • Hitoshi UEDA より:

      4b) スカラーシップの拡充、5b)女性のエンパワーメントへの活用、9c)通信インフラの拡充、17.8)ICTによるイノベーション

      詳細は以下のTim Unwinブログで。
      ICTs and the failure of the Sustainable Development Goals:
      https://unwin.wordpress.com/2015/08/05/icts-and-the-failure-of-the-sustainable-development-goals/

      クリティカルシンキングなのでしょうけれど、ゴールが多すぎる!とか書いていて面白かったです。

      • tomonarit より:

        UEDAさん、コメントありがとうございます。Tim Unwinのブログ、自分も見てみようと思います。しかしゴールの数は多すぎて、MDGsの方がキャッチーな感じだったのは確かに。10月後半から一時帰国するので御都が合うようでしたら、どこかでお会いしたいですね!

  2. […] 先日投稿した“Sustainable Development GoalsとICT”のなかで、ここ最近ICT4D分野でも注目を集めている技術がどんどん新しいものになって来たことを感じる、といったことを書いた。ビッグデータとかド3Dプリンタとかドローンとか色々な技術が台頭してきている。ただ、そいうった新しい技術を「実際にどう途上国開発プロジェクトで活用しているのか?していけるのか?」という点は、自分もまだ勉強中。そんな中、センサー技術の活用について具体的な例を使って一定の示唆を示す投稿がICTWorksにあったので紹介したい。 […]

  3. […] コメントを残す 年末に世銀のWebでDevelopment Impact Bond(以下、DIB)を活用した  “Finance for Jobs”というパレスチナにおける起業家支援+雇用促進を目的とした 雇用開発や教育訓練などを行う事業の記事があった。 前にSocial Impact Bondに触れた記事をUpしてみたが、最近個人的にこのインパクトボンドに関心ありまして、以下の二点について考えてみた。 ①DIBを活用した事業スキーム ②「ICT」の雇用への影響 ———————————- まずは①について。DIBを活用した事業スキーム その前に、、、改めてDIBとは? 以下、ちょっとくどい説明、、 「投資家がドナー/途上国政府の事業に出資し、その事業実施者が行った事業成果に基づき、ドナー/途上国政府から投資家に対して成功報酬が支払われる」 今回の世銀案件でおきかえると、 「投資家が世銀/パレスチナの事業に出資し、その事業者が雇用促進事業を行った結果、パレスチナの雇用環境において事前に定めた目標に達成した場合、ドナー/途上国政府から投資家に対して成功報酬が支払われる」 ことになる(注1)。  つまり一般的な開発事業にビジネスの仕組みを組み込み、より投資対効果が求めるスキームということだ。もちろん成果を貨幣換算するのは難しいし、関係者間の「成果」への合意形成は大変そうだが、SDGs達成に必要な資金の多くが民間資金を充てにしていることやインパクト評価の重要性の高まりを鑑みれば、今後は他ドナーでもこうしたDIB案件の組成が増えてるんでは。そのためにもこの第1号案件がどうなるか今後注目したい。投資家の存在や成果報酬といったビジネス的なやり方だからこそ、成果を数値で見易い民間セクター開発のような案件にはフィットし易いんだろうな。 ———————————- 次に②について。「ICT」と雇用 この事業において、雇用促進の為の職業訓練には、「ICTスキル」向上が含まれ、雇用促進の対象セクターの一つに「ICTセクター」が含まれている。当たり前のようだけど「ICT」と雇用について考えるとき「ICTスキル」と「ICTセクター」は分けて考えたほうが整理し易い。 ICTの普及は「ICTセクター」の直接的な雇用増加に対して正のインパクトは実はあまり大きくない。その雇用はスキルを有する少数人材に限られているからだ。例えば、ICTセクターの雇用は発展途上国の平均では全体の雇用の1%でしかない。OECD加盟国ですら、たった平均3-5%だ(P14,WDR2016)。よりインパクトが大きいのは「ICTスキル」を得ることによって可能となる雇用情報の取得や、ICT以外の他セクターでICTスキルを必要する雇用機会へのアクセスだ(下図参照, WDR2016)。 もちろん、その地域の「ICTセクター」の発達なしには、一般人の「ICTスキル」の取得は進まないのでどちらか一方だけというわけにはいかないだろうけれども。 この世銀案件は、起業家支援も目標としているが、「ICTスキル」を身につけ、 マイクロワークを手にした人々が次に向かう目標はイノベーション&起業なんだろう。例えば、インパクトソーシングの起業家たちなんかはまさにその典型ともいえる。こう考えると、WDRにあった以下の図がしっくりとくる気がしてきた。 ICTによる雇用への影響に関しては、正のインパクト(生産効率の工場、雇用情報へのアクセス、イノベーション促進等)だけでなく、負のインパクト(ICT化による失職等)もWDRでは多く言及されている。結局、結論はケースバイケースで一概には言えない、のでWDRがあんなに分厚くなっちゃうんだろうな。 とりとめない文章ですが、、以上。 ———————————- (注1)DIBに関してはこちらのFASIDの資料がわかりやすい。 「途上国開発における ディベロップメント・インパクト・ボンドの可能性 ~新たな社会的投資を通じた開発課題への挑戦」 […]

  4. […] そう言えば、以前の投稿「Sustainable Development GoalsとICT」で以下のように書いてました。 […]

  5. […] アカデミック Twitter Facebook0 はてブ0 Pocket0 LINE コピー 2016.04.12 年末に世銀のWebでDevelopment Impact Bond(以下、DIB)を活用した  “Finance for Jobs”というパレスチナにおける起業家支援+雇用促進を目的とした 雇用開発や教育訓練などを行う事業の記事があった。 前にSocial Impact Bondに触れた記事をUpしてみたが、最近個人的にこのインパクトボンドに関心ありまして、以下の二点について考えてみた。 ①DIBを活用した事業スキーム ②「ICT」の雇用への影響 ———————————- まずは①について。DIBを活用した事業スキーム その前に、、、改めてDIBとは? 以下、ちょっとくどい説明、、 「投資家がドナー/途上国政府の事業に出資し、その事業実施者が行った事業成果に基づき、ドナー/途上国政府から投資家に対して成功報酬が支払われる」 今回の世銀案件でおきかえると、 「投資家が世銀/パレスチナの事業に出資し、その事業者が雇用促進事業を行った結果、パレスチナの雇用環境において事前に定めた目標に達成した場合、ドナー/途上国政府から投資家に対して成功報酬が支払われる」 ことになる(注1)。  つまり一般的な開発事業にビジネスの仕組みを組み込み、より投資対効果が求めるスキームということだ。もちろん成果を貨幣換算するのは難しいし、関係者間の「成果」への合意形成は大変そうだが、SDGs達成に必要な資金の多くが民間資金を充てにしていることやインパクト評価の重要性の高まりを鑑みれば、今後は他ドナーでもこうしたDIB案件の組成が増えてるんでは。そのためにもこの第1号案件がどうなるか今後注目したい。投資家の存在や成果報酬といったビジネス的なやり方だからこそ、成果を数値で見易い民間セクター開発のような案件にはフィットし易いんだろうな。 ———————————- 次に②について。「ICT」と雇用 この事業において、雇用促進の為の職業訓練には、「ICTスキル」向上が含まれ、雇用促進の対象セクターの一つに「ICTセクター」が含まれている。当たり前のようだけど「ICT」と雇用について考えるとき「ICTスキル」と「ICTセクター」は分けて考えたほうが整理し易い。 ICTの普及は「ICTセクター」の直接的な雇用増加に対して正のインパクトは実はあまり大きくない。その雇用はスキルを有する少数人材に限られているからだ。例えば、ICTセクターの雇用は発展途上国の平均では全体の雇用の1%でしかない。OECD加盟国ですら、たった平均3-5%だ(P14,WDR2016)。よりインパクトが大きいのは「ICTスキル」を得ることによって可能となる雇用情報の取得や、ICT以外の他セクターでICTスキルを必要する雇用機会へのアクセスだ(下図参照, WDR2016)。 もちろん、その地域の「ICTセクター」の発達なしには、一般人の「ICTスキル」の取得は進まないのでどちらか一方だけというわけにはいかないだろうけれども。 この世銀案件は、起業家支援も目標としているが、「ICTスキル」を身につけ、 マイクロワークを手にした人々が次に向かう目標はイノベーション&起業なんだろう。例えば、インパクトソーシングの起業家たちなんかはまさにその典型ともいえる。こう考えると、WDRにあった以下の図がしっくりとくる気がしてきた。 ICTによる雇用への影響に関しては、正のインパクト(生産効率の工場、雇用情報へのアクセス、イノベーション促進等)だけでなく、負のインパクト(ICT化による失職等)もWDRでは多く言及されている。結局、結論はケースバイケースで一概には言えない、のでWDRがあんなに分厚くなっちゃうんだろうな。 とりとめない文章ですが、、以上。 ———————————- (注1)DIBに関してはこちらのFASIDの資料がわかりやすい。 「途上国開発における ディベロップメント・インパクト・ボンドの可能性 ~新たな社会的投資を通じた開発課題への挑戦」 Maki フォローする アカデミックプロジェクト評価 ICT4DImpact BondWorldbankインパクト評価雇用 Twitter Facebook0 コピー Maki ICT for Development .JP […]

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