GoogleとFacebookがアフリカでAIを学ぶ修士コースを支援

アカデミック

ども、Tomonaritです。ICTWorksに Apply Now: FREE Masters Degree in Artificial Intelligence for Africans というタイトルで、アフリカでAIを学ぶマスターコースが学生を募集中(4月15日締め切り)との記事がありました。それに絡んで、ちょっと最近読んだ本のことを書いてみます。

African Master’s in Machine Intelligence (AMMI)

このコース、AIMS(African Institute of Mathematical Sciences)という南アフリカ、セネガル、ガーナ、カメルーン、タンザニア、ルワンダに拠点を持つ高等教育研究機関が提供するもので、パートナーとしてGoogleと Facebookの名前があがっています。コースの名称は、African Master’s in Machine Intelligence (AMMI)。場所的にはルワンダとガーナのキャンパスで学ぶようです。目を引いたのは、All students admitted for the AMMI program are automatically granted a full scholarship! という点!これもGoogleとFacebookのおかげなのか。Webサイトによると、合格率は6%とかなり狭き門。アフリカ大陸中から優秀な学生が集まるんだろうなぁ。

ちょっと気になったので、講師陣をチェックしてみたら、レベル高そうで驚きました。FacebookのAI部門を経てガーナにあるGoogle AI CenterのHeadをしている方がFounder & Directorとなっており、講師にはGoogle AIとFAIR (Facebook AI Research)の方々がズラリ。これはかなり魅力的なコースに思えます。

どうしてGoogleやFacebookがこういう取り組みをするのか?

どうしてまた援助機関でもないGoogleやFacebookがこういう取り組みをするのか?とうことを考えたとき、勿論、優秀な人材を確保したいとか、自社のアフリカでのプレゼンスやイメージを向上させたいという狙いがあるのだろうと思います。そういえば、過去にはKanotがこんな視点からも書いていますね。

今回はまた別の視点として、ここ最近読んだクリステンセンの「イノベーションのジレンマ」「イノベーションへの解」に絡めて、以下のように考えてみました。

イノベーションのジレンマ

どっかで聞いたことがある方も多いと思いますが、「イノベーションのジレンマ」という理論は、業界のリーディングカンパニーみたいな大企業は、市場規模が小さく儲かるかどうかわからない新市場やローエンド市場への新事業よりも、市場規模があり儲かることが明確なハイエンド市場の既存事業にリソースを配分するという経営判断をするため、新市場やローエンド市場に出ていくことが出来ず、そうしているうちに、新市場やローエンド市場に参入した新興企業に打ち負かされてしまうというもの。

通常、新市場やローエンド市場に参入した新興企業の製品やサービスは、性能が低いものの、「性能が低くても安い方が良い!今の市場にある製品って多機能過ぎて使わない機能ばっかだしぃ〜」というローエンド市場のユーザにうけたり、もしくは、「今まで持てなかったモノが所有できる!」という層にうけたりする(怪しいメーカーの安かろう悪かろうスマホでも、スマホが持てるなら買っちゃえ!みたいな)。そのとき、大企業は「どうぞどうぞ〜。安かろう悪かろう製品を貧乏人に売る商売は任せますよ〜。我が社は金持ちのハイエンドなユーザ層に高性能・高価格の製品を売るんで」といういうことで、より高性能な製品を作り市場へ投入していく。でも、時が立つにつれて「安かろう悪かろう製品」も品質があがって行く。同時に、大企業の製品はどんどん高性能・多機能になり、ハイエンドのユーザ層にとってもToo muchな品質になる。そして、ハイエンドのユーザ層も「こんな高性能で高価な製品はいらないや。新興企業の製品が最近は品質が上がってきたからあれで十分だ」となり、最終的に大企業は新興企業にハイエンド市場も奪われてしまう。大企業としては、「小さな規模しかない市場にむけて安かろう悪かろう製品の投入にリソースはさけない」、そもそも「まだ存在しない市場の市場調査は出来ない=(全くの新市場には参入出来ない)」、「ハイエンドの顧客のためにより良いモノを作ろう」という至極当たり前の判断をしているが故に、新興企業に負けてしまう・・・というのが「ジレンマ」とうこと。そして、このように大企業のハイエンド市場を食っていくイノベーションが「破壊的イノベーション」(もっとちゃんとした説明はこちらの資料にわかりやすく説明されています)。

新市場型破壊的イノベーション

上記のように、この破壊的イノベーションは、ローエンド市場型破壊と新市場型破壊の2種類に分かれるのですが、中でも新市場型破壊をより詳しく理解するために、「イノベーションへの解」から以下を抜粋します。

1. 標的顧客はある用事を片付けようとしているが、金やスキルを持たないため、解決策を手に入れられないでいる。

2. このような顧客は、破壊的製品を全く何も持たない状態と比較する。そのため、本来のバリュー・ネットワークの中で、高いスキルを持つ人々に高い価格で販売されている製品ほど性能がよくなくても、喜んで購入する。こうした新市場顧客を喜ばせるための性能ハードルは、かなり低い。

3. 破壊を実現する技術の中には、非常に高度なものもある。だが、破壊者はその技術を利用して、誰でも購入し利用できる、シンプルで便利な製品を作る。製品が新たな成長を生み出すのは「誰でも使える」からこそだ。金やスキルをそれほど持たない人々でも消費を始められるのだ。

4. 破壊的イノベーションは、まったく新しいバリュー・イノベーションを生み出す。新しい顧客は新しいチャネル経由で製品を購入し、それまでと違った場で利用することが多い。

クレイトン・クリステンセン, & マイケル・レイナー. (2012). イノベーションへの解. 翔泳社.

GoogleやFacebookがこういう取り組みをする狙い

この説明、アフリカのイノベーション(M-PESAのようなモバイルマネー、ZIPLINEのようなドローン輸送、WASSHAのような電気の小売サービス等)にぴったりくると思いませんか?まだハイエンド市場を食うほどにはなっていないけど、性質としてはまさに新市場型破壊的イノベーションだと思います。

「イノベーションのジレンマ」が正しいとすれば、大企業自らが新市場開拓を成功させるのは非常に難しく、「イノベーションへの解」では、それを成功させるためには、大企業の文化(大企業が儲かると判断出来る市場にしかリソースを割けない)が及ばない別組織を作るなり、アウトソースすることが提案されています。

となると、GoogleやFacebookがアフリカのAI人材育成を支援するのは、彼らが卒業後に新市場型破壊イノベーションを起こして、そこで協業なり買収なりを出来るようにしておく布石なのだと思いました。儲かる規模に成長するかどうかわからない新市場を大企業自らがリスクをとって開拓するよりも、人材育成でツバをつけておくという戦略。現地の人材の方が現地のニーズにも気がつくし、大企業と違ってベンチャーの方が小さな市場規模でもビジネスが成り立つし、とても理にかなってますね。

以上、こんな風に考えてみました。「将来のビジネスに繋がるからやってんでしょ?」ってことはすぐ分かるのですが、「イノベーションのジレンマ」という切り口で見ることで、大企業は破壊的イノベーションに食われてしまう、大企業自身では破壊的イノベーションは起こせない、だからこそ、こういう取り組みをしている(のだろう)とふに落ちた感じです(最近の大企業とスタートアップの連携(オープンイノベーション)ブームについても)。

最後に、「人材育成でツバをつけておくという戦略」というと、どっかで聞いたような・・・、と思ったら、日本政府もABEイニシアティブでアフリカからの留学生を沢山受け入れて、人材育成からアフリカとのビジネスを促進させていこうと取り組んでいますね。まだまだ日本企業にとってはアフリカは遠い気がしますが、アフリカの優秀な人材獲得競争の相手が、GoogleやFacebookなのだと認識しつつ、ABEイニシアティブも上手く活用してアフリカとの距離を縮めてもらいたいなと思います。

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