WDR2016から気になる情報まとめ —世界銀行がITを2016年の主要テーマに(その3)—

携帯普及のスピードが凄い

Source: World Development Report 2016, Word Bank

世界銀行のWorld Development Report 2016のテーマが「Digital Dividends」であり、その内容については、これまでも何回がネタにしてきました。今回は、このレポートから気になる情報や今度何かのときに使えそうな表現をまとめてみました。

これ、自分がどっかでプレゼンしたり報告書を書いたりする際に、結構使えるんじゃないかと思い、やってみました。皆さんも「おっ、使える」と思ったら、一部、意訳しているところもあるので必ずWDR原本を見てから引用して下さい。カッコ内がページ番号(全てOverview部分のページ番号)です。

  1. 世界の40%以上がインターネットにアクセス出来る。底辺の20%の世帯でも10人中7人近くが携帯を持っている。最貧困層にとっては、トイレや安全な水へのアクセスよりも携帯電話へのアクセスがしやすいというのが現状。(Foreword, xiii)
  2. ケニアではM-PESAにより送金コストは90%低下した。(Foreword, xiii)
  3. 世界の24億人が身分証明書(出生証明等)を持っていない。(Foreword, xiii)
  4. 世界の約60億人は高速インターネットにアクセス出来ない。(Foreword, xiii)
  5. Google検索回数は毎日40億回以上だが、一方で世界の40億人がインターネットにアクセス出来ない。(Foreword, xiiv)
  6. 途上国では、電気や安全な水よりも携帯電話をもっている世帯の方が多い。途上国で下から5分の1のに該当する貧困層でも、70%近くが携帯電話を持っている。インターネットユーザ数はここ10年で3倍以上になった(2005年の10億人から2015年は32億人までに増加する見込み)。(2)
  7. 企業同士はこれまで以上に繋がっているが、世界の生産性の伸びは低下している。デジタル技術により働き方が多様化しているが、労働市場は二極化が進み不公平になっている(特に先進国にて、そして途上国でも徐々に)。民主主義は広がっているが、自由で公平な選挙は減っている。これらがデジタル技術の普及のせいだと言うことではないが、世の中を便利にするデジタル技術が普及しているのにもかかわらず何故?。(2)
  8. それには2つの理由がある。1つ目は、依然として60億人近くがインターネットにアクセス出来ていないため、デジタル技術の恩恵を受けていないという点。2つ目は、デジタル技術による恩恵が新たなリスクにより相殺されているという点。(2−3)
  9. 驚くことはなく、より良い教育を受けている者、よりインターネットへのアクセスが出来る者、より能力が高い者達が最もデジタル技術の恩恵を受けている。(3)
  10. 世界の40億人はインターネットにアクセス出来ない。20億人近くが携帯電話を使っていない。約5億人が携帯電話の圏外に住んでいる。取り残された人達全員にインターネットアクセス環境を提供することがSDGsのターゲットの1つになっている。(4)
  11. 産業革命での蒸気機関技術の発明後、その技術がインドネシアに波及するまでには160年かかり、電力の発明後、それが韓国に波及するまでには60年を要した。だが、コンピュータがベトナムに波及するまでには15年、携帯やインターネットについてはその発明からものの数年で途上国にも波及した。(5) (⇒この携帯やインターネットの普及の早さが電力などとの比較で冒頭のグラフで良くわかる!)
  12. 途上国でのICT技術利活用については多くの好事例があるものの、先進国ではそれらよりも遥かに効果的なICT技術の活用が以前より行われて来ている。(6)
  13. 平均して途上国でも10人中8人が携帯電話を持っている。(6)
  14. 携帯電話については、高所得国では98%の普及率に対して、最も低い普及率であるサブサハラ・アフリカ地域では73%である。(6)
  15. 高所得国では人口の80%がインターネットにアクセス出来るが、それに対して途上国では人口のたった31%しかインターネットにアクセス出来る環境にない。(6)
  16. インターネットユーザ数世界ランクは以下のとおり(6)
    1位:中国
    2位:アメリカ
    3位:インド
    4位:日本
    5位:ブラジル
  17. 2014年までに、国連加盟国193カ国のうち、全ての国が国家のウェブサイトを開設している。
    101カ国においては、(電子政府サービス用に)個人登録アカウントを作成可能、73カ国においては、所得税の手続きが可能、60カ国においては、会社登録が可能、190カ国が国家予算管理システムを利用、179カ国が関税システムを利用、159カ国が税金管理システムを利用、148カ国がデジタル認証システムを利用、20カ国は多目的デジタル認証プラットフォームを利用。(6)
  18. ブロードバンドインターネットを楽しむことが出来るのは世界人口のたった15%。途上国でのインターネットアクセスは携帯電話からが主だが、依然として20億人近くは携帯電話をもっておらず、世界人口の60%はインターネットにアクセス出来る環境にない。(6)
  19. インターネット接続できない人達の多くはインド人と中国人だが、北アメリカ大陸ですらまだ1.2億人がネット接続出来ない環境にいる。(6-7)
  20. 例えば、ウィキペディアへの貢献度は、アフリカ全土からよりも香港からのほうが大きい。インターネットユーザ数ではアフリカ全土は香港の50倍であるにも関わらず。グーグルにインデックス付けされている一般ユーザが作成したコンテンツの85%がアメリカ、カナダ、ヨーロッパからのものであり、科学系学術誌の発行元も同様。(8)
  21. 欧州EUにおける収入トップ20%はボトム20%の層に比べて45倍も頻繁にeサービスを利用している。(8)
  22. ICT産業がGDPに占める割合はOECD加盟国で約6%という低さであり、途上国ではさらに低くなる。
    世界的ICT企業のトップ14のうち8を抱える米国ですら、ICT産業がGDPに占める割合は7%である。(12)
  23. 外国企業誘致と健全な競争を促進するアイルランドが12%と高い。
    一方、アフリカで最も大きなICTセクターの1つを抱えるケニアでもGDPに占める割合はたったの3.8%である(2013年)。(12)
  24. インターネットは電力や道路と同様に国の基礎的インフラの一部となってきている。(12)
  25. アリババのようなeコマース市場は今後5年で6兆 USD以上の規模となる可能性がある。(12)
  26. 途上国ではICTセクターの雇用は全雇用の約1%に過ぎない。例えば、ボリビアやガーナでは0.5%であり、コロンビアやスリランカでは2%である。また、OECD加盟国でも3〜5%という数字である。(14)
  27. ケニアではM-PESAによって80,000以上のエージェントが収入を得ている。中国では最近のeコマースブームで1千万以上の雇用が創出された。この数字は人口の約1.3%に該当する。(14)
  28. 世界の10億人以上が障碍者であり、その80%が途上国に住んでいる。(15)
  29. ホンジェラスではSMSによる情報発信・受信(作物の市場価格情報等)によって、農民の農作物の売値が12.5%上昇した。パキスタンでは、携帯利用によって農民は傷み易い農作物の収穫後の廃棄量を21〜35%ほど削減することが出来た。(15)
  30. アフリカ12カ国での調査結果によると、65%が携帯電話によって生活が良くなったと回答し、20%のみがそうではないと回答している。73%が携帯電話により移動時間とコストの削減の効果について言及しており、10 %のみが別の理由を言及している。3分の2が携帯電話を持つ事でより安全・安心であると感じられると考えている。(16)
  31. (電子政府化が進んでいる)エストニアでは、電子署名により1手続きあたり20分の時間短縮が出来ている。(16)
  32. インドではこの5年間で9億人近くがデジタルIDを取得した。(17)
    ナイジェリアでは、デジタルIDの導入により62,000名の幽霊公務員(実際は存在しないが給料が払われている公務員のこと。要するに給料を誰かが知らばっくれてもらっちゃっている)の存在を明らかにし、その給料(年間10億USD)の削減が出来た。(17)
  33. モザンビークではSMSによる不正行為告発が可能になったことで、投票率が5%上昇した。(17)
  34. しかし、公共セクターのICTプロジェクトの大半は失敗におわり、予算の無駄遣いとなる。(17)
  35. グーグルは世界のデジタル広告収益の3分の1を得ている。(19)
  36. エストニアの電子政府システムでは、市民は同じ情報を2度入力することはありえない。(20)
  37. ナイジェリア人の58%及びインド人の57%はインターネット上にアップした個人的な情報は安全だと信じている。一方、同じ質問に対してフランス人は18%、ドイツ人の16%のみが安全だと信じていると回答している。(20)
  38. 多くの報告書がテクノロジーの発展が不平等を引き起こすと指摘している。(21)
  39. インターネット環境が最も優れている国の1つであるフィンランドは、教育レベルも世界トップクラスであるが、授業の中でICTはほとんど活用していない。(32)
  40. 2014年時点で107カ国がプライバシー法を制定しているが、そのうち途上国は51カ国のみである。(35)
  41. Analog Foundationは一夜にして成らず。(38)

最後のやつは、まさしくこのレポートが訴えかけている結論ですね。ICT導入の効果は教育とか法整備とか、いわゆるデジタルではなくアナログの要素に大きく左右されるということ。なんとなく眺めていると、それなりにここ最近の途上国のICT事情の全容が見えて来るような気がする。

コメント

  1. Ozaki Yuji より:

    32.のナイジェリアの幽霊公務員(ghost workers)の件については、日本語でも時事通信経由で報じられていましたね。幽霊公務員2万人超「クビ」=給与13億円節約-ナイジェリア
    ナイジェリアの新聞報道によると、最も悪質なケースでは、1人で20人分の給与口座を持っていたとか。別ソースでは、最も強烈だったのは教育省で、登録公務員の1/3程度が幽霊公務員だったという話も。
    ナイジェリア国内300箇所の給与支払いセンター(payroll distribution centers)で50万人以上の公務員を登録しまくって名寄せしたみたいですね。ここで使われた複合型バイオメトリクス認証技術は、米国アトランタに本社がある、M2SYS Technology社のもののようです(余談ながら、同社は2010年に富士通と、2008年に日立と提携している)。同社でこの事例を紹介しています
    ガーナでも2012年以降、同様の取り組みがなされているようなので、もう少し様子見かな。

    ついでに、私も某プロジェクトの中でSMSの活用をやろうとしている、というかやらされそうになってます。システム自体はAndroid端末上のSMS gatewayに、クラウドを組み合わせたものを試作してテストしました。パフォーマンスは十分であるものの、いかんせんSMSの送信数に強い制約(キャリアの200通/日、Androidの100通/時間)があるので、国際SMSの利用が現実的となります。それでも、数がまとまるとSMSの送信って結構高いです。末端からインターネット通信が利用できたほうがコスト的には絶対的に有利だな、というのが現状の実感です。
    結局、継続的費用の問題に帰結するので、事業そのものが収益を生む状態でないと、それに基づくICT利用自体で利益を上げるのはツラい。まさしく「Analog Foundationは一夜にして成らず」ですねー。

    • tomonarit より:

      Ozaiさん:ナイジェリアとガーナの情報、ありがとうございます。しかしナイジェリアの13億円ってのは凄いですよね。財政赤字と貿易赤字によって債務がかさみ過ぎたガーナでは昨年からIMFの支援が入りましたが、その支援枠組みのなかでも幽霊公務員の整理は常に「ちゃんとやれよ」とIMFから目を光らされているようです。結果が楽しみですね。

  2. おじじ より:

    ドラッカーという経営学者がいました。最近では、もう誰もアメリカの経営学者はドラッカーを読まないなんていいますが、通信技術の革新により、社会資本の立ち上がりが早くなると述べた著書もあって、その代表が携帯電話で、固定回線を引く投資の必要がなくなるからだ述べていました。そして、特に指摘していた地域は、アフリカ諸国だったのを覚えています。それでも、無線によるインターネットとスマホの台頭までは、予言していませんでした。でも、どんなに省電力の機器(LED照明など)が発達しても、電力は必要で、世界銀行のAccess to electricityを見ると、今現在でも、アフリカのほとんどの人々が入手できない現状を明らかにしています。次は、太陽光発電なのかなーとも思うんですよね。

    • tomonarit より:

      おじじさん:コメントありがとうございます。
      アフリカでも抜きん出た電化率を誇るガーナですが、昨年は雨不足からのアコソンボダムの水不足でハンパない停電続きでした。確かに太陽光発電には期待があるものの、コスパの面でもう一歩技術革新がないと、普及は難しい様子なのかと憶測します。ただ、この技術革新は時間の問題という噂も聞いた事があり、数年後にはメガソーラーが普及しアフリカの電力事情が改善される日が来ることを祈りたいですね。

  3. Ozaki Yuji より:

    32.のデジタルIDで言及されているナイジェリアの事例について、ちょっと深堀り。

    日本でも時事通信が「幽霊公務員2万人超「クビ」=給与13億円節約」を配信していましたね。おそらくその元ネタであろう、ナイジェリアの新聞によると、この2万人超(23000人)の中の人は訴追されたようです。最も悪質な事例は、1人の公務員が20の給与アカウントを持っていたとか(個人的には、名義貸しのピンハネだと思うのだが)。
    この個人を識別するのに使われたのが、M2SYS Technology 社の複合型バイオメトリクス認証技術であるようです(同社の事例紹介に本件導入が、実施方法を含め書かれています)。同社はナイジェリアの投票者登録(Voters Registration)も手がけている様子。

    ガーナでも、幽霊公務員は2014年12月6日付ロイターの記事にあるように大きな問題であるようですね(IMFディール後、援助再開の条件になるとも言われていた)。ガーナに関してはなかなか資料が見つからないのですが、米国ミネソタ州のウェルデン大学の2015年度奨学金論文に、「Payroll Fraud: Effects of Ghost Names on the Government Wage Bill in Ghana」という論文があり、近年の経緯がよくまとまっていました。

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