「ブロックチェーン×国際協力」、果たしてどういう結果が出るのか?

ブロックチェーンの国際協力における利用については、かなり盛り上がりを見せているが、わりと冷静な冷めた意見を述べているICTWorksに「Four Lessons Learned Launching Blockchain Financial Services for NGOs」というタイトルで興味深い投稿がありました。4つの教訓(Lessons Learned)とは以下のもの。

  1. Blockchain is not a swiss army knife:ブロックチェーンで何でも出来る訳じゃないよ!「何が課題でどう解決したいのか?」をまず考えて、「ホントにブロックチェーンじゃないとダメなの?」と考ろよ〜、ということ。
  2. Translate technical terms to business processes:ブロックチェーンが凄い技術なのは分かるが、援助関係者は技術のことわかんないから、分かりやすい言葉を使って下さい!そして援助関係者が知りたいのは、「ブロックチェーンがどういう仕組みか?」じゃなくて、「ブロックチェーンで何が出来るのか?」です、ということ。
  3. Be honest about your capability – and your ambition:やりたい事とやれる事をちゃんと見極めよう!ブロックチェーンは世の中を変える技術!の可能性はあるけど、まだまだ未知の領域で、環境も整っているのかいないのか?分からないことも多いし、まだまだ道のりは遠いでしょ?変化ってそんなすぐに起きないよ〜、ということ。
  4. There is no progress without experimentation:とは言っても、試してみなきゃ、何も起きない!ということ。

1、2、3、と辛口コメント風でしたが、最後は結構前向きな感じで締めているあたりは、好感度高し。流石、ICT4Der。

個人的には、2の援助関係者が知りたいのは「ブロックチェーンがどういう仕組みか?」じゃなくて、「ブロックチェーンで何が出来るのか?」(しかも分り易い説明で!)という指摘にはとても頷ける一方で、援助関係者がそう言っていられたのはこれまでの話で、これからは、テクノロジーについては、その仕組みも一定程度は理解しないといけない時代だと感じます。

「技術を中心に考える過ぎる(=Technology-drivenな)ICT4Dプロジェクトは失敗に終わる(だからもっと人間とか社会・経済・政治背景とか文化とかを考慮しないとダメですよ)」というのが、これまでのICT4D分野の王道の解釈(だと自分は思ってます)。とは言え、「ブロックチェーン×国際協力」の分野では、Technology-drivenな雰囲気を感じます。ただ、最近の技術革新の見ていると、もしかして必ずしも、「Technology-drivenなアプローチが失敗する」という一昔前の通説が今も100%正しいとは言えないのではないか?と感じている自分も。「ブロックチェーン×国際協力」、果たしてどういう結果が出るのか・・・?

でも、その結果が出るのはまだ当分先のようです。上記3にも絡みますが、まだまだ始まったばかりというのが専門家の意見のよう。NTTデータのWebサイト「ブロックチェーンは社会基盤となるか」に、 MITメディアラボ研究員の松尾真一郎氏のコメントが掲載されていたので以下引用します。

インターネットが世に出て商用化される前は、技術的に成熟させるまで10年以上、NSFNetというアメリカの政府が支援した実験用のネットワークで実験をやっていました。それが1995年に完全商用化されて一般に解放され、同時期にWWWも普及し始めました。その後、SNSといった次のイノベーションが世の中に普及したのは「LinkedIn」が2003年、「Facebook」が2004年の登場ですから、さらに8年ほどかかった計算です。

新しいインフラの技術がものになるのに、まず10年。その8年後に新しいものが出てくるというように段階が増していったのですね。ブロックチェーンが気軽にみんなで使えるまでにも時間がかかります。1980年代後半から90年代前半のインターネットと同じことをやり直さなくてはいけませんから。

ホントにここ最近のブロックチェーン熱は、2000年頃のICT4Dブームに似た感じなのかな?と思ったりしています。(とか言いつつ2000年頃は、全然ICT4Dのことを知りもしなかったので、あくまで憶測ですが)

当時の盛り上がりで国連ICTタスクフォースが出来たり、世界情報社会サミット(WSIS)が開催されたり、とICT4Dという分野が確立され、遠隔教育やテレセンターのようなプロジェクトが多数立ち上がった一方、失敗に終わったICT4Dプロジェクトも多かった…。「ブロックチェーン×国際協力」が一過性の盛り上がりで終わらずに、途上国開発を大きく促進するインフラになると願いたいです。

“「ブロックチェーン×国際協力」、果たしてどういう結果が出るのか?” への2件の返信

  1. 結局のところ、政府系や政府系の息のかかった資金が国際協力に流れる場合、「公共調達」は避けて通れない関門です。技術が世に出て、多くの製品やサービスに実装され、見積もり合わせで単純ショッピング(笑)できるまでには、それなりの時間がかかりますよね(デザインビルドでの調達は応札書類審査が複雑化しますよん)。

    『2000年頃のICT4Dブーム』では、2000年九州沖縄サミットでの「グローバルな情報社会に関する沖縄憲章」、2003年のジュネーブ世界情報社会サミットあたりがマイルストーンかと。
    当時は「予算が出るから猫も杓子もITに群がってた(継続性?陳腐化?なにそれおいしいの?)」状態だったと記憶しています。案件担当レベルでは「IT/ICTで何ができるか」よりも「おいくら万円」が重要事項だったような気が。IT/ICTをご飯のフリカケのように使いたいのに、前例がないから(笑)。
    2004年3月10日に実施された、無償資金協力実施適正会議(第十回会合)では、「無償資金協力によるコンピューターの供与について」外務省無償資金協力課から以下のような回答がありました。このあたりから、無償でコンピュータ供与、が難しくなってますね。
    https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/kaikaku/ugoki/sochi/3_komoku/3_10kai.html
    ——
    コンピューターの供与に関しては、大学のみならず多くの要望が寄せられており、実際は悩みの種である。というのはIT技術は日進月歩であり、コンピューターは3年もすれば陳腐化する。一旦供与するのはいいが、更新は誰が行うのか。更新の際にも援助することは援助依存体質を生んでしまうし、援助し続けることはできない。プロジェクトの一部としてコンピューターを供与することはこれまでも行ってきているが、何十台、何百台の供与となると、陳腐化が早いという問題がある。
    ——-

    その後、陳腐化という言葉は、使われはしたもののあまり深く考えられることもなく、後になって「継続性」という言葉に吸収されたように感じます。
    この頃、私は機材の陳腐化をできる限り遅らせるために、以下の極めて非現実的な条件を導出しました(苦笑)。
    ————–
    陳腐化を感じないための運用上の工夫:
    ・最初から利用想定環境を絞り込む。
    ・機材導入後、当初想定以外の新しいことを一切しない。
    ・外部環境の変化との関わりを断つ。周辺機器も接続しない。
    ・機器の利用者を最小化し、さらに利用頻度を極力落とすことにより、機械的・人為的な故障発生の可能性を最小化する。
    ———–
    プロジェクト目標より、(目につきやすい)機材の使用頻度や故障が重視されていた時代でしたねぇ。お笑いです。

    1. Ozakiさん、歴史を知る方ならではの生々しいコメント(笑)、どうもありがとうございます。2000年頃の盛り上がりからの、無償資金協力実施適正会議での「冷静な議論」。当時指摘されていることって、テクノロジーが新しくなっても本質的には同じ要素はありますね。陳腐化、維持管理、持続性…。これらの課題を無視して良いスキームを作っちゃうのか、それとも真正面から向き合って既存の制度のなかでやっていくのか?
      結局は支援やプロジェクトのゴールをどう設定するかのような気がしますね。ある意味、援助にどこまで何を求めるのか?という・・・・。おっと、また深い議論にハマって行く感じがするので、この辺で。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください