オンライン授業のコツはエンパシー

教育・人間開発

先日(12月25日)、日経新聞に「デジタル化、カギはエンパシー」という記事が載っていました。内容は、コロナの影響で事務作業を自動化するRPA+AIというサービス(チャットボットやOCR)の需要が高まっているが、日本の事務作業の緻密さや繊細なコミュニケーション、仕事へのこだわりと言ったものがうまく発揮できれば、この手のサービスで日本が世界標準になれるというポジティブな内容。私自身は、日本にはこれまで「判子文化、紙文化」というそもそも非効率なものがあり、その非効率にメスを入れずにどうにかしようとするのがRPAというややネガティブなイメージを持っていたので、とても面白い記事でした。また、今後、この手の非接触・非対面のサービスで重要になるのは、「エンパシー(共感)」の役割をデジタル化の動きに組み込めるか次第だという点も書かれていました。

このエンパシーという言葉、ちょうど最近目にすることが多かったので(デザイン思考の最初のステップが「エンパシー」という話を読んだり聞いたりしていたので)、ふと考えてみました。

そこで繋がったのがオンライン授業。

2013年から先生をやらせてもらっている神戸情報大学院大学で、私が担当するICT for Developmentの授業を2020年は全てオンラインで実施しました。約15名の学生が参加してくれたのですが、うち9割が海外、しかもアフガニスタン、ギニア、モザンビーク、ボツワナ、ミャンマーなど途上国からの参加です。必ずしも回線が高速&安定しているとは言えないネット環境の国々とZoomで繋いでの完全オンライン授業に、正直、結構戸惑いました。自分自身の振り返り・備忘録も兼ねて、なんちゃんて「オンライン授業のコツ」を書いてみます。

  • PC2台とか「PCとスマホ」とか、デバイスは2台用意すべし
    • これ超大事。ZoomでPPTを画面共有して説明を行っていると、チャット欄を見るのが困難です。そこで、デバイスを2台用意して片方は管理者でログイン、もう片方はユーザでログインし、発表者としての画面に加えて、学生さんが見ている画面も見られるようにしました。このメリットは説明中、学生さんにどんな画面が見えているかやチャット欄が見られることだけではないです(次のブレークアウトのところに続く)。
  • ブレークアウト機能を使うときのポイント
    • ブレークアウト機能を使ってグループディスカッションやグループワークをしてもらっているとき、管理者だと各グループ(ブレークアウトルーム)に入ることが出来ないですが、ユーザとしてログインしている自分をグループに入れることは出来ます。なので、管理者としてユーザの自分を最初はグループ1に入れ、次にグループ2に入れ・・・と各グループを巡回させることが出来ます。これはとても便利でした。
    • 他にも、学生が「ヘルプ」ボタンを押した場合、管理者の方の画面で確認して、ユーザの自分をそのグループに入れるように操作するようにもしていました。
  • グループワークは時間を切ろう
    • 対面授業のときは45分や60分という長時間のグループワークをしてもらうこともありました。教室内で各グループが議論するので、自分も各グループを回って議論を聞いたり、作業がスタックしていそうなグループ(シーン・・・としているとか、逆に白熱し過ぎているのですぐわかる)に入ってアドバイスするとかが出来ていました。でも、オンラインになるとそういうことが凄い難しい・・・。なので長時間のグループワークを15分位に分断し、そのつど途中経過(中間成果物)を報告する場を設ける、と言った工夫が必要だと痛感しました。
  • 時間がかかることを織り込んでおく
    • 上記のグループワークのように対面で出来てたことが出来ないので、対面よりも時間がかなりかかります。複数名が同時に発言するような議論も出来ないので尚更。正直、毎年やっていた授業内容よりも少ない内容しかカバー出来ませんでした。
  • PPTスライドはアニメーション機能を使わない
    • Zoomで見ると、かっこいいアニメーションもカクカクしてしまうので、自分はアニメーション機能は使わないことにしています。スライド上で矢印をつけたり丸で囲んだりするときは、矢印や丸のないスライドの次に矢印や丸のついたスライドを置くようにしています。スライト枚数はすごい増えるのですが、この方が良いと思っています。
  • Youtubeなど動画を流すときは、Zoomで流すのではなく各自のPCで
    • 授業で動画を共有することもあり、Zoomでプレゼン中に音を出す場合は、パソコンの音(パソコンのスピーカーから出る音)を共有する設定が必要なのは知っていたので、当初はこの設定をして「良し、大丈夫!」と思っていたのですが、そもそも学生さん達のネット環境を考慮すると、Zoomで流すとカクついてしまうので、URLをチャットで共有するなりして個別で見てもらうのがベターとわかりました(学生さんから教えてもらいました)。確かに!
  • 色んな機能で参加を促そう
    • ネット環境から顔出しをしない学生がほとんど。なので、どうも参加しているのかがよくわからない・・・という問題がありました。そこで、極力、参加を促す工夫をしました。まずほぼ全ての授業の最初にブレークアウト機能で学生同士で世間話をする時間を10分位設けました。これはICT4D Labの運営で学んだ「チェックイン」というもの。「これから授業だー」という心の準備をしてもらうと同時に学生同士がフランクに話す時間を設ける意図でした。
    • その他にも、Zoomでのアンケート機能やGoogle Jamboardを使ってのグループワークなどを実践しましたが、Zoomのホワイトボード機能やスタンプ機能などもっと色々とやれたこともあったかと感じています。
  • エンパシーが重要
    • エンパシーとは「共感」という意味。対面での授業と比較して、なかなか学生同士、学生と私の間の共感が生まれないのは仕方ないのですが、それ故にどうやってそれを実現するかがポイントのような気がします。
    • 実際に授業をして見て、ここは日本人よりも外国(しかもアフリカと途上国)の人達の方が上手に(自然に)やっていると感じました。学生同士のグループワークを見てみると、とてもスムーズにコミミュケーションが出来ていたり、また、私の画面に娘が映り込んだり、学生さんの音声に子供が家族の声が入ったりした際に、誰かが気の利いたコメントをしてくれて自然に和むということもあり、彼らのコミュニケーション能力の高さを感じました。
    • こういう温かみのある場をオンラインでも作ることが出来たら、授業はかなりスムーズに行くだろうと感じました。これが最大の秘訣かもしれないです。

以上、本当に雑多な自分自身の振り返りになってしまったのですが、これからオンラインで授業をする方の参考になったらと思います。来年は対面で授業が出来ることを祈りつつも、もっとオンライン授業でのスキルを上げられるように模索していきたいところ。

冒頭のエンパシー(共感)の要素を非接触・非対面のサービスに入れ込んでいけるか?という話ですが、オンラインでのコミュニケーションが外国の方ほど上手くない日本人だからこそ、そこを機能で補うことが出来たら良いのもしれないですね。

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