オンライン出版イベントを行いました!

アカデミック

はじめまして、ICT4D Labメンバーの北村(あ)です。

先週、5月14日(土)にオンライン出版イベントが開催されました。
70名以上の方にご参加して頂きました!パチパチ。土曜の夜にも関らず沢山お集まりいただき、誠にありがとうございました。

本日はイベントの内容について簡単にご紹介したいと思います!

いきなり余談ですが、私自身がLabメンバーになったのは半年程前で、当時はゲラができたぞー、本が出るぞーと盛り上がってた時でした。えー、仕事じゃないのに翻訳して本出すの!?凄いモチベーションだな。そんなのできるの?と目をまん丸くしてみてました。
さらに、「イベントもやるかあ~~」となってからも、あれよあれよと皆が動き、、ふと気づくと準備ばっちり整ってイベント当日を迎えておりました。Labメンバーの結束力、まじ凄いです。

さて、話を戻して、この本は英国マンチェスター大学のヒークス教授が書かれたICT4Dの教科書的な本になります。
こちらを竹内さん中心としたLABメンバーで翻訳をされました。
14名の翻訳者、他にも多くのメンバーが協力し、20名近くの方で作られたそうです。それもすべてオンラインで!
翻訳のきっかけや、なぜオンラインコミュニティメンバで行ったのか?など、詳しい経緯はこちらのブログをご参照ください。

イベントの様子

では、イベントの様子を簡単にご紹介しましょう。詳しく知りたい方はぜひ当日の動画をご覧ください。

まずは、結構、衝撃的な数字から始まります。

『世銀の2016年World Development Reportによると、ICT4Dプロジェクトの87%が失敗(FailedもしくはPartially failed)』

ええーーー!!??そんなに?と思いますよね。。
この分野やっぱり簡単にはいかないことがよくわかります。
そして今、世界中でDXとうたわれ、デジタル活用なくして成長なし!という時代になっていますが、(偏ってるかしら?)そんな今だからこそ、この本が必要とされている!そういう思いがあるそうです。

確かに、VUCA時代の今こそ、ICT4Dで培われた経験や知恵は、日本のような先進国でも必要とされる情報な気がしますよね。

この本にはどんなことが書いてあるのか?

  • 序文
    • 本書の目的や構成に関する記載の他、そもそもなぜICT4Dを学ぶのか?という点についてヒークス教授の思いも書かれています
  • 第1章~第3章
    • 国際開発の大きな潮流などの背景も含め、デジタル技術と国際開発の関係や、デジタル技術を社会に導入するとどのようなインパクトがあるのかなど、基本となる理論、モデル、フレームワークを丁寧に説明しています
  • 第4章以降
    • 社会課題毎に実際の事例を用いながらデジタル技術を採用したインパクトや課題を解説しています。経済成長、貧困削減、教育や保健といった社会開発分野、電子政府など、様々な分野での実際のプロジェクト事例を、第1章から第3章で紹介した理論、モデル、フレームワークを用いて分析しています。

フレームワークの例として、エチオピア遠隔教育事例を使って「オニオンリングモデル」の説明をイベントではしてくれました。「オニオンリングモデル」の定義はぜひ、本で詳しく見ていただきたいのですが、ようするに、技術・情報システムだけを見ていてはダメで、その周りの組織や環境面なんかも見ないとうまくいかないよ、観点抜けてない?ちゃんと全体捉えようね、っていうのを教えてくれるモデルです。

これ日本でも同じですよね。DXあるあるですが、DXやるぞー、と言って、技術イノベーションや新規サービスを作ろうとするけれど、そもそも失敗を認めらる組織文化や評価制度じゃないよね。組織の基盤を作らないと、DXなんて成功しないじゃないか?といような。なんか、同じだなと思いました。

それともう一つ。
実は私、本を読んでモデルの存在自体は把握していたつもりだったのですが、エチオピアの事例を聞いて初めて腑に落ち理解できました。やっぱり事例と共に見ないとモデルだけだとわからないですよねー。
そういう意味でも、オンラインコースで実例で学ぶという機会は理解を深める意味で必要だなと感じました。

どんなふうに出版に至ったのか?

竹内さんと同じくヒークス先生の教え子であり、翻訳の中心メンバでもある野田ちひろさんがとても分かりやすく翻訳の振返りを語ってくれました。その中から、いくつかピックアップしてご紹介してみます。

  • 教科書だけだと、なかなか理解できず、更に途上国の話だとコンテキストが分からないからイメージつかないところを、Labメンバーの経験から具体的な話と結び付け理解ができた
  • 後半の章はメンバーそれぞれの経験に合わたアサインができたのもよかった
  • 1章をまず訳し、翻訳ルールや用語辞書を作って行ったが、そこでは表せない「トーン」の統一が難しかった
  • 表現のローカライゼーションもみんなで話し合いながら行った。例えば、「one man’s meat is another man’s poison」。さて皆様ならどう訳しますか!?「カラスのかってでしょ」とか?
  • 多人数でやるが故にクオリティコントロールが難しかった。本の中にも出てくるチャンピオンの存在が必要
  • チームでやるからこそできた(1人で本を出そうとすると止まっちゃうことが多い)

なるほどー。さらっと書いていますが、仕事を持つ中、プロボノでのこの量の翻訳ですからね。実際はむちゃくちゃ大変だったと思います。本も14人で翻訳しているのに章をまたいで読んでも違和感ないんですよね。この一貫性を保つのも大変だったと思います。。

また、ゲストで出版社の道中さんからもコメントを頂けました。最初は、正直不安だったそうです。
翻訳者が多ければ翻訳は楽になる、というのは大いなる誤解で、人が増えると一貫性とスケジュール管理が非常に大変になる。そして、リアルの方が親密になるので、オンラインだと会えないうちにフェードアウトになる懸念もあり、催促もし辛いだろうし。こりゃ難しいでしょ~と思ったそうなのですが、実際は全く逆。

常に締切前に届き、竹内さんの強い熱意・リーダーシップ・マネジメント力に感服する、といったコメントでした。

何となくの想像ですが、竹内さんの緩いけど知らぬまに進めてしまう不思議なリーダーシップと周りにいる超アクティブなLabメンバーの一人一人の動き。
そして、皆のやりたい!って気持ちががっと一点集中してできたんだろうなと思います。いやー、改めて凄い。

質問コーナー

こちらも少しだけピックアップします。

  • ICT4Dのリーダーに求められるのは?
    • 本にあるけれど、チャンピオンの存在。チャンピオンは3つのRを持つ。
      • Result:明確な結果ビジョンを持っている
      • Relationship:技術以外にも組織内外含め、様々なリレーションシップを持つことができる
      • Resoure:そして、そのリレーションからリソースを調達してくる
  • ICT4Dの経験・知見の日本への還元は?都会と田舎の差があったり、日本はDX遅れている部分もあるし・・
    • 確かに日本のDX化でも使える。オンラインコースは日本の取組している人にも活用してもらえるようになれたら。日本が持っている技術を渡すのではなく、国際開発の例をリバースエンジニアリング的に日本に知見持ってきたりというのもやっていきたい。
  • オンラインコースでは本に載っているような演習あるか?
    • Labメンバー自身が色んな経験があるので、それらを使って様々なバリエーションの演習問題を作っていきたい。
  • 上位の(政府レベルの)議論に更に還元できればと思うが?
    • まさに中立的な立場で言えるので、今後上位に提言していけたらと思う。

事前の質問も沢山集まり、当日延長戦に入ってからもQAが続き、本当に皆さんの関心度の高さを感じました。
どうもありがとうございました。

さぁ~、いかがでしたでしょうか?
もっと知りたいちゃんと知りたい!という方は、こちらの動画をご覧ください。もちろん本をお手元にして。amazonのリンクはこちらです

また、ICT4Dオンラインコースの詳細が決まりましたら、ブログ等でご連絡いたします。お楽しみに!!

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