【書籍紹介】Web3とメタバースは人間を自由にするか by 佐々木俊尚

ブックレビュー
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ども、Tomonaritです。久しぶりに本の紹介です。ブラジルへいく飛行機(10時間+14時間=24時間のフライト、超長い・・・)のなかで佐々木俊尚さんの「Web3とメタバースは人間を自由にするか」という本を読みました。

佐々木俊尚さんは私が昔から好きなジャーナリストで、ICT4D Labとして翻訳・出版したデジタル技術と国際開発」の帯を書いて頂いた方でもあります。

この本の内容は、一言でいうと、Web3と呼ばれる技術が当たり前に浸透したあとの社会がどうなっていくのか?ということが書かれています。Web3としては、ブロックチェーン技術に基づくトークンエコノー、VR、AR、MRを総称してのXR、メタバースといった技術に加えて、自動運転についても書かれています。

まず問題提議として、今のインターネットは誰もが無料で色々なサービスを使えるかわりに、それらのサービスを提供しているGAMFAMといった「ビッグテック」に支配されているが、その「支配と隷従」の関係性から脱却し「完全な自由」を手に入れることは可能か?ということろから始まります。

ビッグテックに閲覧履歴や個人情報を取られるのは嫌だと言っても、みんなが使っているSNSやメッセンジャーを使わないというのも不便。であれば、そのようなプラットフォームの「支配と隷従」から抜け出すのではなく、ブラットフォームの支配のあり方を変えることがWeb3にはできる、それがトークンエコノーやメタバースということが説明されています。

支配のあり方を変えるとは、その支配の仕組みをオープンにすることやその支配に参加できるようにすることであり、それはブロックチェーンにより各種情報が公開されることやトークンを購入すること(=参加)である、との解説がなされています。

トークンエコノミーの可能性を示す実例として、新潟県山古志村の錦鯉NFTの話が取り上げられていました。ちょうど先日のICT4D Labのスタディグループで、この錦鯉NFTの事業を運営されている方のお話を聞いたばかりだったので、今日、この本を読んだことに運命的なものを感じました。以下、抜粋です。

ニシキゴイのNFTは単なるデジタルアートとしてだけでなく「電子住民票」を兼ねたものとして買った人を「デジタル村民」とするという設定ないっている。NFTの売上を地域に還流するとともに、デジタル村民となってくれた人たちと長期にわたって「関係」し「参加」してもらい、されにはかられの知恵や人間関係のネットワークを活用しようという考え方だ。

Web3とメタバースは人間を自由にするか(佐々木俊尚)

このWeb3により実現される「関係と参加」のテクノロジーが今、求められているに期待できるというようなお話が展開されています。

この他にも、AI、メタバース、自動運転といったテクノロジーの話やベーシックインカムといった話まで幅広い視点でこれからのテクノロジーと社会のあり方について議論がされています。

正直、私も100%理解しきってないのですが、テクノロジーと社会のあり方を考える切り口を与えてくれる本でした。

「じゃ、ICT4Dへのインプリケーションは?」というと、いわゆる途上国開発プロジェクトの資金の一部をトークンを発行・販売することで集めることにし、そのプロジェクトを支援したい先進国の人たちだけでなく、一定数は実際の対象国・地域の関係者に購入してもらう(もしくは供与する)ことで、そのプロジェクㇳのオーナーシップを高めてサステナビリティを高めるといった可能性があるかと思いました。

これはこの本には取り上げられていませんでしたが、実際、株式会社奇兵隊という日本企業の子会社がウガンダの農村を対象に、人々の生活をより良くするための新たな試みとして、NFTを活用したオープンタウンプロジェクトを実施しています。

本プロジェクトは、デジタルアートとしてコレクティブNFTを全世界に向けて販売し、その売り上げを元に、『発展途上国の現地住民』、『現地住民を支援するコミュニティ団体やNGO』、『NFTアートの購入者』が力をあわせて、途上国の貧困地域でまちづくりをしていくプロジェクトです。NFT の購入者は、オンライン上のコミュニティでアイディア出しや議論に参加することで、支援する地域のまちづくりに貢献することができます。

か、メタバース+XRを活用して、援助する側とされる側が仮想空間であっても対面に等しいコミュニケーションをとれるようになるとか、そんな未来があるかもしれないと感じました。

メタバースの可能性については以下の記載もありました。

・・・将来は通信回線がさらに高速になり、映像の解像度も上がって、アバターではなく本人の映像と会話できるようになるだろう。このテクノロジーは「ホロポーテーション」と呼ばれていて、人の姿を投影して高画質な3Dのモデルとして再現し、ネット経由でどこにでもリアルタイムで送信できるというものである。2022年には、国際宇宙ステーション(ISS)に滞在中の宇宙飛行士が、地上にいる医師らのホロポーテーション映像とコミュニケーションをすることに成功している。使われたのはマイクロソフトのMR機器「ホロレンズ」で、透過型の眼鏡になっていてリアルの風景と仮想の物体が重ね合わされて表示されるというものだ。

Web3とメタバースは人間を自由にするか(佐々木俊尚)

ここまで進んでいるとは、わざわざ24時間かけて飛行機でブラジルへ行かずとも、仮想空間でリアルなコミュニケーションができる日も近いかも、と思いました。

また、「Zoomとメタバースでのコミュニケーションにそんな違いあるの?」と思った方もいるかと思います(私がそうです)。

その点については、「見られている」感覚が全然ちがうそうです。

Zoomでももちろん画面の向こうの相手が自分を見ている感覚はしますが、没入感の強いVR空間では、この人はカメラを見ているのではなく、私を見ているという感覚になるそうです。この見られている感覚が、イコール、誰かから承認されている、認められているという感覚につながるそうです。

以上、超個人的な感想です。この本にはもっといろんな情報・視点・考察が含まれているので、興味を持った方、読んでみてはいかがでしょうか。

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