ルワンダのICT Innovationの可能性と課題に関する論文が掲載されました!

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「ルワンダのICTイノベーションの可能性と課題」に関する私の論文を紹介します。ルワンダICTセクターの強みと課題についての質的研究になります。

こんにちは、Kanot(狩野)です。「ルワンダのICTイノベーションの可能性と課題」に関する査読付き論文が、以下のサイトに掲載(Publish)されましたので、紹介させていただきます!以下のリンクからPDFもダウンロードできます。

Bottlenecks of ICT Innovation in Rwanda | Proceedings of the 2020 International Conference on Information and Communication Technologies and Development
論文の要約

ルワンダはICT立国に向けて、いくつかの成功実績がある一方で、複数の課題を抱えている。31人のルワンダICT関係者のインタビューをもとに、ルワンダのICTセクターおよび経済開発に関する、強み、弱み、そして教訓について分析を行った。インタビューの主要な回答結果として、以下の3点が確認された。
・ルワンダのICT立国に向けた意欲は、真剣に受け止められ、広くシェアされている。
・ビジネスを開始することは容易である一方、ビジネスを継続することには困難が伴う。
・長期的な取り組みを必要とする課題として、高等教育の実践化、起業家向けのファイナンシング、起業家マインドの育成などが挙げられた。

これらの結果をもとに、グローバルテックハブやITセクター開発などの先行研究と比較・考察し、ICT立国に向けた提言として、高等教育の実践化、インターンシップの推進、海外経験の促進を挙げる。

論文の掲載に伴い、ICTD 2020というICT4Dに関する国際学会でプレゼンをしました。動画(英語)でご覧になりたい方は、以下の通りプレゼン動画がアップロードされていますが、今回のブログでは、発表スライドをもとに、日本語で簡単に解説をいれながら、プレゼン内容を説明していきたいと思います。

研究の背景

まず、タイトルですが「Bottlenecks of ICT Innovation in Rwanda」です。本当はエクアドルに行ってプレゼンするはずだったのですが、コロナの影響で残念ながらオンライン開催になってしまいました(泣)。指導教官でもあるミシガン大学の外山健太郎教授との共著です。

まず、皆さんルワンダというとどんなイメージがありますか?ルワンダはアフリカ中部に位置する小国なのですが、おそらく「全くイメージがない」「虐殺があった国」「ICTイノベーションでイケてるらしい」というイメージで三分するのではと思います。

以下の図(左)の通り、ルワンダはICT立国に非常に力を入れていて、ビジネス環境整備・治安・汚職の低さなどはアフリカでも上位にランクインしています。その一方、図(右)の通り、国際機関が出している教育・ICTの指標では世界の下位20%にとどまっています。

リサーチ・クエスチョンと研究手法

このように、国の強いリーダーシップと、実際の国際指標にギャップがある状況に見えるのですが、「ルワンダのICTイノベーションを促進する強み、弱み、そして教訓はなんなのだろうか?」というのがこの研究の問い(リサーチ・クエスチョン)です。

次のスライドは先行研究です。ITセクター開発とアフリカのイノベーションの大きく2つについてレビューしましたが、多分興味ない方が多いと思いますので、個別の説明は省略します。興味ある方は、論文の最後に参考文献リストがありますので、そこから辿ってみてください。

次に研究手法です。ルワンダの首都キガリにある ICT Chamberという政府機関及び、そこに隣接するkLabに私が3ヶ月間研究インターンとして入り込み、31人のICT関係者にインタビューしたもの(いわゆる質的研究)です。政府・起業家・教授・学生・エンジニア・援助機関スタッフに半構造化インタビューをしました。

ルワンダのICTイノベーションの強み

インタビュー結果から、まずはルワンダのICTセクターの強みについて、インタビュー結果を紹介します。

まず最初の強みは、ルワンダが国としてICT立国を推進していくというリーダーシップは、インタビュー参加者全員が強く同意していました。「大統領がドローンをやるといえば、すぐにそういう企業が設立される」といった発言にもあるように、大統領のリーダーシップが言及されていました。

そしてルワンダが、アフリカのICTハブとして認知されつつあり、様々な国際会議や国際機関本部を設置しているといった話や、英語・フランス語が公用語という特色を生かして、海外企業がアフリカに進出する際のハブを目指しているとのコメントがありました。

次の強みはビジネス起業支援です。ルワンダは非常に起業がしやすい国で、回答者によると、わずか6時間で会社登録が完了するそうです。

そして、もう一つ非常にユニークだと私が感じたのは、「国の発展に貢献したい」という意欲です。これは私もインタビューしていて非常に驚いたのですが、ほとんどの起業家・エンジニアが主たるモチベーションとして「国への貢献」を挙げていました。ルワンダで働く大学教授(外国人)によると、この思考は、アフリカの中でもルワンダ特有であり、1994年の虐殺の反省や、それに伴う教育内容などが主な原因ではないかとのことでした。

ルワンダのICTイノベーションの課題

では、続いてルワンダが抱える課題についてのインタビュー結果を説明します。

まずは人材育成です。ルワンダの国立大学を卒業したエンジニア・起業家たちは、口を揃えて「教育内容が実践的ではない」と言っていました。その結果、学生が社会で働くレベルに達せず、仕事に付けない新卒者が多いとのことです。一方、企業の方も、大きい会社が少ないこともあり、研修制度など若手を育てる環境が整っていないという指摘がありました。その結果、スキル(と給料が)とても高いエンジニアと、ほぼ無経験のエンジニアに二極化しているというコメントがありました。

次の課題は起業文化に関するものです。一つは起業家マインドセットが十分に醸成されない中で起業しているケースが多いという指摘です。事実、kLabにいる多くの若者は起業家なのですが、実際はちょっとしたWebを作って起業家と自称しているレベルの人も多い状況でした。

また、他の業界とのコラボが苦手という指摘は多くのルワンダ人回答者から挙げられていて、本来お互い補完すべきスキルのはずなのに、コンピュータ専攻の仲間内で起業しているケースなども多く、ビジネスが持続的でない、などのコメントがありました。

考察と結論

では、これらの結果から何が言えるのでしょうか。まずはルワンダの強い国としてのリーダーシップと、いまだ残る多くの課題のギャップがあります。例えば、起業は非常に簡単な一方、ビジネスを続けることは容易ではないというコメントがありました。こういった点を鑑みると、比較的短期間に改善可能な点(ビジネス環境、起業環境、デジタル投資)などは国リーダーシップでできている一方、ある程度期間が必要な課題(教育制度、起業家マインドセット、ビジネス文化)などが主に残っているように見受けられました。

このように、ルワンダのリーダーシップは素晴らしいものの、完全にICT立国として進んでいくにはまだ時間が必要というのが見解です。そういった点を踏まえて、3点政策提言を挙げさせていただきました。

  • 既存企業への支援強化
    ビジネス立ち上げまでは素晴らしい一方、継続の難しさを指摘する起業家が多かったことから、少しずつ既存企業への支援(会計・経営の支援やマッチングイベント)をもっと強化しくとよいのではと考えます。
  • 高等教育の実践化
    教育内容の刷新は時間がかかるため、インターンシップをもっと積極的に導入し、実戦の経験を積む機会と、企業側の若手採用ハードルをさげることができるとよいのではと考えます。
  • 人材の海外経験促進
    ルワンダ人回答者の多くが「国への貢献」を挙げていることから、仮に海外経験を積ませても、そのまま流出してしまうリスクは他国と比してとても低く、海外の知見と人脈を持ち帰ってくれる(頭脳循環になる)可能性が高いと考えるため、積極的に外に人を出していくといいのではと考えます。

最後に結論です。下図のように3点挙げてみました。

論文のまとめ

ルワンダはICT立国に向けて、いくつかの成功実績がある一方で、複数の課題を抱えている。31人のルワンダICT関係者のインタビューをもとに、ルワンダのICTセクターおよび経済開発に関する、強み、弱み、そして教訓について分析を行った。インタビューの主要な回答結果として、以下の3点が確認された。
・ルワンダのICT立国に向けた意欲は、真剣に受け止められ、広くシェアされている。
・ビジネスを開始することは容易である一方、ビジネスを継続することには困難が伴う。
・長期的な取り組みを必要とする課題として、高等教育の実践化、起業家向けのファイナンシング、起業家マインドの育成などが挙げられた。

これらの結果をもとに、グローバルテックハブやITセクター開発などの先行研究と比較・考察し、ICT立国に向けた提言として、高等教育の実践化、インターンシップの推進、海外経験の促進を挙げる。

ご清聴(というかご精読)ありがとうございました。このように自身のプレゼンをブログで説明したのは初めての経験だったので、これが読みやすいのか正直よくわからないのですが、なにかしらご参考になれば幸いです!

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コメント

  1. […] 去このブログでも何度か取り上げており、つい先日の私の論文でも、国の力強いリーダーシップをルワンダの強みとして挙げていますが、まさに大統領がこれを実践しているということ […]

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