こんにちは、Kanot(狩野)です。拙著「バングラデシュIT人材がもたらす日本の地方創生」で採り上げたB-JETと呼ばれるJICAのバングラデシュ・デジタル人材向け日本語・IT研修プログラムのイマ(JICAプロジェクト終了後)を追う新連載を始めました。
本日は第2回記事「New B-JETの就職支援 in 宮崎編」として、宮崎市におけるバングラデシュIT人材の就職事情について書いてみようと思います。
今回は、New B-JETにて修了生の来日支援や就職支援を行い、B-JET研修内でビジネスの講座も担当する、株式会社B&Mの代表取締役である荻野紗由理さんにインタビューさせていただき、その内容を元に記事化してみました。株式会社B&Mの概要と荻野さんのプロフィールはこちらのページをご覧ください。

New B-JET修了生の就職支援
New B-JETでの日本語・IT研修が終わった後の就職支援については、大きく宮崎向けと全国向けに分かれています。主に宮崎向けは、今回お話を伺ったB&M社、そして全国向けはグローバルギークス株式会社と分担しています。(グローバルギークス社は次回の記事で取り上げます!)
B&M社の主な就職支援業務としては、B-JET研修期間中の採用選考スケジュール調整や、採用に関心を持った企業への履歴書配布・面接などの調整、そして合格した生徒の来日に向けたサポートなどを行っています。
前回の記事で、New B-JETの第1期の実績として、コロナの影響で研修が全てオンラインだったにも関わらず、6割弱が日本での就職の切符を手に入れたとのことを紹介しました。これは個人的にはかなり驚きで、一体どんな企業がコロナ禍で現地に行ったり対面で面接をしたりできない中で外国人の採用を決めるのだろうと興味を持っていました。
その点について荻野さんに伺ってみたところ、「今回のNew B-JET1期生で採用を決めてくれた企業は全て、(JICAプロジェクトの)B-JETでの採用実績があるIT企業だったんです。」とのことでした。
やはりネックはオンラインであったということで、一度でもバングラデシュ人を採用したことがある会社はオンラインだけでも採用をすることができたようですが、今までバングラデシュ人を雇ったことがない会社に対しては、荻野さん自身も「初めて採用する企業がオンラインだけで採用活動を完結させるのはリスクが高いのではないか」という気持ちもあったようで、結果的にリピーター中心の採用となっていたようです。
私がバングラデシュに駐在していた際も、一度バングラデシュに来てもらえれば、人懐っこさやあの独特の雰囲気などで、一気にファンになる人も多かった実感もあり、やはり一度現地に行ってファンになってもらって、人材も採用してもらえる状況に早く戻って欲しいと感じます。
B-JET生の定着について
インタビューでは、答えにくい質問だろうなとは思いつつ、「B-JETで宮崎で働き始めたデジタル人材が辞めてしまったケースはどのくらいあるのか?」とも聞いてみました。その回答としては、やはり辞めてしまった人も一定数はいるそうで、その中にはバングラデシュに諸事情で帰らざるを得なくなった人もいる一方、東京を中心とする都市部への転職者が多いのが現状とのことでした。
転職の理由としては、給料の違いというのはもちろんある一方で、「高度な技術を身につけたい」といった技術面を理由に転職するケースがあるとのことです。ここは本当に重要な点と私(狩野)は思っていて、外国人のデジタル人材は、日本人よりプログラミングや最新技術に強い興味を持っていて、いわゆるPM(プロジェクト・マネージャー)のようなものへの関心が高くない印象があります。(日本は逆で、SIerやITコンサルと呼ばれる要件定義・PM集団が人気が高いです。)ですので、そのあたりの考え方を理解して採用・配属することは、ミスマッチや人材流出を防ぐ一つのアプローチになるのではないかと感じています。
また、転職の理由として「英語で業務がしたいから」という理由もあったそうです。もちろんB-JETである程度は日本語を勉強して来日しますが、慣れ親しんだ言語の方がパフォーマンスを出せるし何よりも仕事がしやすいのでしょう。私もアメリカ・バングラデシュに住んでいた時に「くそー、日本語だったらもっといいパフォーマンス出せるのに・・」と悔しさをよく感じていたので、その気持ちはよくわかります。
もちろん、彼らが日本語を勉強してくれると受け入れ側としては助かるのは事実なのですが、彼らにベストパフォーマンスを出してもらいたいのであれば、英語で業務ができる環境を用意してあげるということは、人材を繋ぎ止めるという観点と、より活躍してもらうという観点で重要なんだろうと思います。
一方、B-JETで宮崎就職した人材の半数以上はいまだ宮崎に残っているそうで、役職に就くB-JET生が出てきたり、お客さん対応を任されるほどに日本語が上達したB-JET生もいるそうです。
ただ、残念なのが、コロナの影響もあり、宮崎における地域との交流の機会がコロナ前と比べて大きく減ってしまったとのことです。私の本の中でも、B-JET生が宮崎市内の高校生に英語でプログラミングを教える交流イベントを紹介していました。(本の表紙はそのイベントの写真です。)コミュニティ意識を高めてもらうという点からも、早く状況が改善して欲しいと思います。

今後の目標
今後のB&M社の目標を荻野さんに伺ったところ、最初に挙がったのは、バングラデシュでのB-JET生や宮崎企業が利用するシェアオフィスをダッカに作ってみたいという構想でした。将来的な絵として、B-JET生がブリッジエンジニアとして活躍することや、企業がスケールアップしたいと思った際に気軽に利用できるスペースなど、より宮崎とバングラデシュのITビジネスを促進するようなものを考えたいとのことでした。
また、荻野さんは「新しい選択(転職)する修了生たちを、個人的には応援したいとは思っている」と前置きはしつつも、宮崎になるべく残ってもらえるような仕組みづくりについても取り組んでいきたいとのことでした。
加えて、同僚や顧客とのコミュニケーションの仕方で気になることが時折あるとのことで、新卒での参加者が多いB-JETにおいて、一般的なビジネスマナーと日本的なビジネス文化を学んでもらえる仕組みも強化していきたいとのことでした。
まとめ
今回は宮崎市にて就職支援をするB&M社の荻野さんにお話を伺いましたが、コロナ禍での就職支援の難しさ(&リピーターのありがたさ)、人材の宮崎への定着に向けた課題と目標などについてざっくばらんに話していただきました。
次回は、同じく就職支援で、宮崎以外の地域への就職を支援するグローバルギークス社にお話を伺う予定です。乞うご期待!
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