売れないアイドルがブレイクしている感じで寂しい

3. その他

ども、Tomonaritです。10連休も終わり、久々の投稿です。

連休中、たかはしいつろーさんの国際開発に関するPodcast、Fairly.fmでお話させて頂きました。テーマは、

売れないアイドルがブレイクしている感じで寂しい

というもの。タイトルからは何だかわからないですが、ここ最近感じている、イノベーションブームに乗って、今まで国際開発業界ではあまり注目を浴びてなかったICT4D分野もメジャーになってきたなぁ・・・、というもの。ここ最近、「アフリカではドローンで検体の輸送が出来る、モバイルマネーが普及している、ブロックチェーンが使われている…etc.」という話題をかなり多くの人たちがするようになったと感じます。国際開発系の雑誌などでも多く取りあげられてるし。そんな状態を、ICT4Dという売れないアイドルを応援して来たオタクファンとしては、若干、寂しく思ったりしているわけです、私。

寂しい・・・という感じと合わせて、以前もこのブログに書いたのですが、自分は今のブームに乗り切れない感が否めない。その理由をどうもうまく説明できなないのですが、主に以下の3点なのかな、と思います。

  • イノベーションと言う曖昧なものに対する援助機関の過大な期待感が良くわからない
  • アイデアソンやスタートアップ支援などがその方法として注目されているが、「本当かなぁ・・・」という思いがある
  • 「これまでにないようなアイデアを出す」ことはイノベーションじゃなく、「アイデアを実現・成功させる」ことで、初めてイノベーションと呼ばれると思う

1つ目の点の「定義が曖昧」という話題はこのブログでも何度か取り上げたとおりです。また、「過大な期待感」というのは、2つ目の点にも関連しているのですが、失敗を許容しずらい援助機関が、失敗の許容範囲(例えば成功率3%を目指し、100案件中97件は失敗してOKなど)を明確にせずに取り組んでいる感が否めないということ。「千三つ」(1000社のうち3社しか成功しない)ともいわれる新規ビジネスのような取組を各種環境が厳しい途上国で実施するのに、そんなに期待するのはどうなのか・・・?

3つ目の点は、以前も同じことを書いてましたが(「ケニアのM-PESA成功から学べる点とは?」)、アイデアを出すこと自体にはあまり意味がないのだと思っています。そもそも、アイデアだけで勝負できるような目からウロコのアイデアはそうそう出てこないと思うし。と、私が言っても説得力がないのですが、世銀の前総裁ジム・ヨン・キム氏も以下のような発言をしていました(以下は、エチオピアの革製品ビジネスを展開しているandu ametの鮫島さんのブログから)。

「イノベーションはある日突然降って沸いてくる偉大なアイディアのことではない。そのアイディアを手を使って形すること。そしてそれを継続することで、イノベーションになる。」

「現地の中にきちんと入り、謙虚に耳をかたむけることことが重要」

勿論、誰もがこういう点も理解していると思うのですが、今のイノベーションブームを見ていると、アイデア出しの部分に重きが置かれているような気がしており、そこに違和感がある。いろんな領域の人たちを集めて(オープンイノベーション)、多面的な角度から議論すれば良いアイデアが出るだろう、というのは一理あるけど、そこだけじゃダメでしょ?逆に、誰でも思いつくアイデアだけど、きっちりやりきったら成功となった、というケースの方が多いのでは?

と、こんなことを考えていたら、面白いニュースを見つけました。

バヌアツ、ドローンでワクチン」というニュース(上記の写真はこのニュースから拝借)。

バヌアツ政府がドローンで離島へのワクチン輸送を開始したという内容。ルワンダのような山岳地域同様に、輸送インフラが整っていない島国でもドローン活用は威力を発揮しそう。この記事の良い点は、このプロジェクトの成否の秘訣は、看護師であると説明している点(以下、同ニュー―スからの抜粋)。

『特に、このドローンプロジェクトは、看護師の役割が大きいです。事前に必要数のワクチンを準備し、ドローンにワクチンをセット、到着したらワクチンを取り出し、速やかに接種。さらに、そのドローンを中心地まで戻す操作をする、これらの作業を全て看護師がやらなくてはなりません。それらを教えたのが、JICA隊員で 環境省公衆衛生局予防接種拡大計画課配属の松井香保里さんです。彼女は、この3月で2年の任期を終え、日本に帰国されました。彼女がいなくなった後も、バヌアツ人看護師だけできちんとプロジェクトを運営できるのか、ここが松井さんも危惧するところであり、このプロジェクトの未来がかかっています。』

上記のJICA隊員の方のインタビューでは、「ドローンの飛行は安全面から時間管理が必須だが、あらかじめ準備するという習慣がないバヌアツ人にちゃんと出来るか?」、「支援なれをしている感があるバヌアツ人。外国人がなんとかしてくれるという風潮からワンステップアップして、自意識をもつことが大切」という点がコメントされており、とても良いと感じました。やはり人とかプロセスをちゃんとしないと成功はしないということ。

アイデアの実現のためには、こういう泥臭いところの方が重要だと思うのですが、今のイノベーションブームにはそれを感じないのが自分の感じる違和感の要因だと思います。

アイデア出しが上流工程だとしたら、実施はその下流。現在のブームが上流工程であり、その後、下流工程の議論になるのかもしれませんが、そのときには、失敗プロジェクトの評価として「下流工程への意識が足りなかったなぁ…」的な反省にならないと良いのですが。そのためには、アイデア出しで盛り上がる一方で、実施にも目を配って、過去のICT4D分野の教訓を活かしていくことが必要だと思います。前回のKanotの投稿にも共通していますが、「ICTはあくまでツール」なので、期待し過ぎちゃダメ。「これからはイノベーションだ!何かやれ!」と言っても、何も出てこない。

とはいえ、「やってみなきゃ何も始まらない」ということで、このブームをテコに今までやれなかったことにトライ出来るようなる、というのも今のブームの一つの功績だとは思います。たかはしいつろーさんとの話のなかで、これまでも国際開発の世界には、援助のトレンドがあり、各トレンドに乗って達成できたこと、出来なかったことがあったという点を改めて認識しました。

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コメント

  1. Toshi より:

    それがまさにVerganti言うところのOVERCROWDEDな状況なんですよね。アイデアを具現化するためのデザインが必要で、そのアイデアがもたらす意味のイノベーションをちゃんと提示しないと一発屋で終わってしまう。私はイノベーションがただの変化Changeと違うのはそれが持続的なことだと思うし、その変化した事項が持つ意味が根本的に変わった時はじめてイノベーションたりうるのだと思います。

    • tomonarit より:

      そうですね。Vergantiの本はよんだことがないのですが、Toshiさんのコメントをきっかけに、読んでみることにしました!感想はまた後日。
      アイデアはすでに溢れているって言うのは、特に途上国コンテクストでは、より当てはまる気がします。課題が多いだけに、改善やビジネスのアイデアは沢山あると言う意味で。ただ、それを具現化するのはハードルが高い。必要なのは具現化のデザインと言うことなのだと、私も思います。

      • Toshi より:

        個人的にこのブームに対して冷めた目で見てしまうのは、政府やドナーが入るとクリエイティビティよりは前例とか効率性の理論がデザイン上優先されちゃうからかもしれませんね。本当にユーザーを惹きつけてるのはそのあたりではないんだけど。

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