ICT4Dの基本に立ち返ろう

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ども、Tomonaritです。5月30日から二週連続でICT4D Lab公開勉強会をやっています。先週の第1回、第2回のあと、この勉強会に参加いただいた方がツイッターでコメントを書いてくれました。そのコメントが個人的に良かったので、コメントへの返信代わりにこの投稿を書いてみます。

まず、いただいたコメントはこちら。

「それ、貧困層の生活向上に繋がるの?ホント?」って言う観点は、原点ですよね。公開勉強会の私の発表でもっと触れるべきだったなぁと反省。そして、実はこの観点はICT4D研究者の中では結構トラディショナルに言われ続けているポイントだったりします(ICT4Dだけでなく、より広くMIS(Management of Information System)の研究者も同様のことを言っており、例えば、以下の図の元ネタとなっているのは、Laudon & LaudonはICT4DではなくMISの研究者です)。

一例としてはマンチェスター大学のHeeks教授のCIPSODARモデルというものがあります。

Source: Heeks, R. (2017). Information and communication technology for development (ICT4D). Routledge. pp.8

パッと見、よくわからない図なのですが、情報システムの全体像を示しています。左から、Dataが取得されてシステムにInput(入力)され、そのDataがProcess(加工)されて(と同時にStore(保存)される)、価値のあるOutput(=Information)になり、Recipient(ユーザ)に渡される、といういもの。

なお、Dataは単なる数字の羅列だったり文字列だったりで、それだけでは価値がないもの、Informationは、Dataが何らかのロジックによって統合や分類などが施されて、ユーザにとって価値ある情報というのが前提です。

図の上の方に「Core Information System」というくくりがありますが、一般的に情報システムというと、この四角の範囲を指すことが多いと思います。システム構築会社としては「要件・仕様に沿ったOutputを提供できるシステムが構築出来たら、それでOKですよね?」ということ。

一方で、この図には、Decision、Action、 Resultというその先があります。

価値がある(と思われる)情報を受け取ったユーザが、その情報に基づいて判断して、アクションに移し、最終的にメリットを教授する、というのがDecision、Action、 Resultです。

例えば、ESOKOのようなサービスを考えて見ます。ESOKOは農作物の市場情報や栽培テクニックを農民に対して携帯SMSで配信するサービス。ガーナなどアフリカ数カ国で展開されています(こちらのサイトに日本語でわかりやすい説明が載っています。第3回目の公開勉強会でもICT4D Labメンバーの原さんが説明してましたね)。

市場情報や栽培テクニックを受け取った農民は、市場価格を見て「今度の日曜日にじゃがいもを市場Aに売りに行こう!」と判断し(Decision)、じゃがいもを運ぶためのリヤカーを借りて市場へ行き(Action)、いつもより高い価格で販売して収入を得る(Result)、と言った感じです。

ただ、果たして全ての農民がこんなスムーズにメリットを享受出来るのか?まず、市場情報を受け取っても語学力や理解力が乏しければ上手い判断が出来ない、上手い判断が出来ても、リヤカーを借りる金がないとか、行きたい市場までの道がたまたま雨でグジャグジャで行けないとか、市場に行ってみたら皆同じ情報に基づいて同じ市場に来たことで、じゃがいもが供給過多で買い叩かれちゃったとか・・・、いろいろな問題が考えられます。

さらには、図の最初のCaptureのところで、誰が市場価格をタイムリーに入手してシステムに入力するのか?という点でも問題がありそうです。このサービスの提供元が1日でも市場価格のInputを忘れたらユーザからの信用はガタ落ちですよね。

ということで、ICT4Dプロジェクトで注目すべきは、必ずしも「Core Information System」だけじゃなく、このCIPSODARの最初から最後までを考慮しないと、「それ、貧困層の生活向上に繋がるの?ホント?」という問いには答えられないと言えます。

これがICT4Dの難しさであり原点と言っても良いポイントだと私も思っています。この点については、昔ブログに書いたつもりでいたのですが書いてませんでした。これを書くきっかけをくれたツイートに感謝です!

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