国際開発分野でのオープン・イノベーションへの期待と課題(その1)

イノベーション・新技術

ども、Tomonaritです。ここ最近良く耳にする「オープン・イノベーション」について、改めて理解を深めようと思い、「オープン・イノベーションの教科書」(星野達也著)という本を読んでいます。

というもの、ここ最近、国際開発業界でもオープン・イノベーションという言葉を見聞きする機会が増えてきたから。「JICA、オープン・イノベーション」でググってヒットした中からいくつか紹介すると以下のとおり。

一般的には大企業がベンチャーやスタートアップと連携するときの手法として使われるオープン・イノベーション。国際開発の背景ではどういう活用が期待されているのか?ということを考える上で、まずは正確に オープン・イノベーションの定義を理解しておきたくて、この本を手にとりました。「オープン・イノベーションの教科書」 によれば、その定義は、以下のとおり。

”モノづくり企業(いわゆるメーカー)が、モノづくりの過程で見えてきた課題に対して、自分たちだけで解決することにこだわらず、必要に応じて社外から最適な策を探し出すことで、より迅速に課題を解決するための手段である。

そして、

”メーカーが、自社のみでは解決できない研究開発上の課題に対して、既存のネットワークを超えて最適な解決策を探し出し、それを自社の技術として取り込むことによって、課題を解決する。”

という説明もあります。ただ、 以前「イノベーションってなに?」というKanotの投稿にもあったように、イノベーションという言葉が曖昧な上に、「オープン」というさらに曖昧な言葉がくっついているだけあり、 これでも結構意味は曖昧だと個人的には思います。

で、読み続けていくと「あ、これは分かりやすい」と思ったのが下記図の説明。オープン・イノベーションを①自由参加のコンソーシアム型と②戦略的提携型にカテゴリ分けして整理していて、各カテゴリの事例もあってイメージがわきました。

Source: https://www.foresight.ext.hitachi.co.jp/_ct/16986491

①自由参加のコンソーシアム型に比べて、②の戦略的提携型の方が事業化や実利を求めるうえでは有効。なぜなら、明確な主体者が明確な目的を持ち、その目的達成のために必要な資産や技術を持つ組織を見つけ出して協業するため。また、②のなかでも技術探究型(インバウンド型)技術提供型(アウトバウンド型)の2パターンあり、前者のほうが成功する確立は高い。なぜなら、技術探究型は目的が明確で、採用を前提に技術を求めるので、求める技術と提供される技術の間に多少の乖離があっても、そこから調整することが出来るから。一方、技術提供型は売り込みたい技術が「帯に短し襷に長し」となる場合が多い。

なるほど~。この説明で自分も頭の整理が少し進みました。
JICAがやっている中小企業・SDGsビジネス支援事業などは、上記のカテゴリの 技術提供型(アウトバウンド型) になるのだろうと思います。また、上記の例示した 「JICA-高専イノベーションプラットフォーム」JICA Innovation Quest は、 技術探究型(インバウンド型)、一方、  TICAD STIオープンイノベーション プラットフォームは、①自由参加のコンソーシアム型 といったイメージか…?それとも3つとも ①自由参加のコンソーシアム型 になるのか…?(これ、あくまでも私個人の見解です。JICAがどう整理しているのかは分かりません)。

国際開発の背景では、一番成功率が高い技術探究型(インバウンド型)を実施するのが一番良さそうな一方、一番ハードルが高く課題も多そうだと感じます。例えば「明確な目的を持ち、その目的達成のために必要な資産や技術を持つ組織を見つけ出して協業する」主体を援助機関だと仮定すると、「採用を前提に技術を求める」ことが出来るのか?(実験的には出来ても、その技術を使い続けるというのは途上国政府の判断になるだろう)とか、逆に主体を援助機関ではなく途上国政府と仮定すると、そもそも彼らにとってのオープン・イノベーションとは、「既存のネットワークを超えて」最適解を探すことなので、援助機関じゃない組織と組むことを意味するのではないか…? とか。「課題を持つ途上国に代わって援助機関が解決策を探す役目を担っている」という根本的な構図に問題があるような気もします

以上、自分自分の頭の整理のために書いてみました。まだ1章が終わったところなので、読み続けながら、国際開発の背景ではどういう活用が期待出来るのか?をよくよく考えていきたいと思います。そのためタイトルに「その1」と付けています(「その2」がいつになるかは未定ですが)。各種コメント、大歓迎です~

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コメント

  1. Ozaki Yuji より:

    あけましておめでとうございます。出張が多い生活だとお見受けしましたが、どうぞご自愛ください。

    技術探求型(インバウンド型)って楽しそうで興味深いですね(リンク先の記事は、マッキンゼーの人らしい物言いだと感じます)。オープンイノベーションをROIで語っているところが、企業や会社だけではなく個人レベルまでをM&Aする感覚なのかなあ。
    当該記事の例にあるP&Gやフィリップスは、前提条件として、世界にまたがる流通網(エコシステム)とtoC/toBへのブランド力がすでにあり、加えてアップルに至っては俗に「信者」とも称されるロイヤリティの高いユーザーをアーリーアダプターの母体として持っていますよね。
    そういう組織って、目利きの力も強いのでしょうけど、新しいネタに極めて貪欲に喰いついているようにも見えます。そのため、過去には組織が死にかけるようなズッコケをやっちまったり、新規の潜在的な競合を小さいうちにツブすようなコトもやっていたりするわけですが…。

    この種のイノベーションネタは「業者を介して」では出会えないのではないかと考えています(中間経路ばかりが増えて意思決定が遅くなりそうだし)。
    荒唐無稽な考え方ではありますが、オープンイノベーションみたいなコトをやりたい場合、(「よくわかんないけどヨロシク」の一言でホイホイと営業が飛んできてくれるような)業としての人材派遣や人材紹介、SESなどの仕組みに頼らず、イノベーションを起こしたい人や組織自身が人材を探索し、見極めることから始めた方がいいのかもしれないですね。資源を他者に注文するのではなく、自らが資源を掘りに行くような方向で(笑)。

    • tomonarit より:

      Ozakiさん
      今年も宜しくお願いします!
      早速、今年一番のコメントをありがとうございます!

      「目利き」と言う点、私もオープンイノベーションの要だと思います。
      そして、この目利き力がない組織が、それを外部に頼るということになる場合、P&Gとかフィリップスのような成功を得るのはかなり難しくなる気がします。Ozakiさんの意見に同意です。
      記載したように、国際開発におけるオープンイノベーションの主体は誰?という点がやっぱり難しく問題だと感じますね。

  2. […] ども、Tomonaritです。先日の「国際開発分野でのオープン・イノベーションへの期待と課題(その1)」の続編です。イノベーションについては相変わらずモヤモヤしているのですが、ここ […]

  3. […] tです。以前、投稿した「国際開発分野でのオープン・イノベーションへの期待と課題」(その1)、(その2)の続編です。 今回は、国際開発を担うJICAのような援助機関に求められる […]

  4. […] で、2020年5月末、そんな充実していたアビームを辞めてトーマツに転職しました。転職エージェントから連絡をもらった時は、「監査法人でICT4Dの仕事が出来るのか?」とクエッションだったのですが、色々と調べてみると、流行りのSTI(科学技術イノベーション)を途上国課題の解決やSDGsの達成に向けどう活用するか?と言った分野の案件をやっており、自身でソリューションを作り上げるというではなく、ソリューションを持っている多様なアクターをつなげるオープン・イノベーションとかプラットフォーム作りみたいなところをやっているのが「面白いかもなぁ」と思いました。そして悩みに悩んだ結果、小学校3年生の娘から「やらない後悔より、やって後悔しな!」という言葉に後押しされ、転職したのでした。流石、我が娘、小3にしてなかなか大人びた発言、と感心したら、「って、ヒカキンさんがYoutubeで言ってたし」ということでした。 […]

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